このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(152)小イワシの甘辛煮つけ

煮汁は煮詰めるが焦げないように

 料理がうまいか下手かは、魚がさばけるかどうかで決まる。そう思っている。僕はさばけないから、下手な部類に入る。
 それなのに時々、クール便で魚が送られてくる。中学時代からの友人が高知県でポンカンを作っている。以前はそのポンカンを送ってくれた。毎度毎度ではいけないと思ったのか、最近はグレに変わった。海が近いからだ。
 でも困る。数が多いから焼いたり、煮たりするが、刺し身も食べたい。そこで、果敢にさばくことに挑戦する。難航する。中骨に身が大量にくっつく。切断面がギザギザになる。皮に身がべったりとつく。刺し身にする部分が限りなく少なくなる。仕方がないから、鍋にする。
 そのうえで、友人と会った時には、「うまかったわ。焼いても、煮ても、刺し身も」と報告する。刺し身を3番目にするのは、少し良心が残っているからだ。
 魚がさばけなくても、別に不自由はない。スーパーに行けば、切り身にして売っているし、頼めば2枚にも3枚にもおろしてくれる。小さなイワシだって、開いて骨を取ったものも用意してある。フライやかば焼きには打ってつけである。
 イワシでは思い出がある。大阪の友人と青春18切符を使って、広島県尾道市に日帰りで遊びに行った時のことだ。駅の売店の人に、魚で一杯飲める店を尋ねた。「海側は観光客相手だから高い」と言って、山側の行きつけの小さな居酒屋を教えてくれた。店の大将が薦めたのが、小イワシの刺し身だった。確か500円。それまでもイワシが好きだったが、大好きにランクが上がった。
 友人も同様で、イワシの煮つけが得意だと言うようになった。そうなると、ムラムラと闘争心がわく。
 家の前のスーパーで、頭と腹を取った小イワシを売っていた。しかも、20尾ほど乗っていて、税別198円。これを買わない手はない。友人と勝負できる。失敗してもいい。太っ腹である。
 鍋にコンブを敷く。その上にイワシを並べる。梅干しも置く。しょうゆ、酒、みりん、砂糖、すりおろしたものかチューブ入りのショウガをよく混ぜ、鍋に注ぐ。量はイワシの高さに半分くらい。煮たてたあと、落としぶたをして弱火で煮る。時々、煮汁をスプーンですくってイワシにかけ、煮詰まってくるとできあがり。
 こちらは甘辛いが、友人のはもっと薄味のはずだ。きっと勝ったに違いない。何てったて、200円でビールが何杯でも飲めるのだから。
 1つだけ問題がある。頭と腹を取った小イワシをスーパーで売っていない時は、どうすればいいのか。答は簡単。作らない。できれば、友人に電話をして、作ってくれるように頼み、オーケーならビールを下げて行く。その場合、「薄味もうまいなあ」とこびを売ることにする。(梶川伸)2015.11.04

小イワシ

更新日時 2015/11/04


関連地図情報

関連リンク