編集長のズボラ料理(837) トマトハヤシライス
また家族の、いつもの一言。「テレビで見た」。これは「作れ」と同義語。「おいしそうだった」と言う。これも常套句。
それはトマトハヤシライスだった。なーんだ、である。ハヤシライスにトマトを入れるだけじゃないか。ルーは市販のものを買ってくるだけだし。想像の余地はなく、どうも気乗りがしなかった。。僕はハヤシではなく、断じてカレー派である。それも一因だった。
大阪市・堂島の地下街のカレー屋さん「インディアン」にはよく行った。勤めていた毎日新聞の本社が堂島にあったころは、会社の真下だったからだ。本社が西梅田に移っても、チョコチョコ行った。定年後も時々行く。
それはなぜか。多分、カレーのルーに麻薬が入っていて、中毒になっているからに違いない。その直感は多分、当たっている。同じような道をたどる同僚がたくさんいるのが、それを裏づけている。
インディアンに行けば、カレーライスを食べるのが当たり前。ところが、カレースパゲッティーを頼む後輩がいる。邪道である。しかも、大盛りで頼むから、愚か者としか言いようがない。
それどころか、ハヤシライスを食べる後輩もいるから、困ったもんだ。ハヤシには麻薬が入っていないから、この店に行く意味はない。何度そう言っても、意に介しない愚か者だ。
テレビの話題は、しばらくほおっておいた。すると家族が言った。「ハヤシのルーを買ってきた」。ここまでされては仕方ない。邪道のハヤシを作った。
牛肉の切り落としを使う。タマネギを大量にくし切りにする。鍋にの油をひき、2つの具材を炒める。水を入れて熱し、ルーを加えて煮込む。最後にミニトマトを加えて煮る。
皿に盛ると、赤いミニトマトが結構可愛いではないか。これなら、邪道系でも許せる。そう思った。
ところが、である。ルーは「完熟トマトのハヤシライスソース」だと知った。それだけはない。しばらくして、テレビでそのルーのコマーシャルを見た。何だ、CMに乗せられていただけだったのだ。(梶川伸)
更新日時 2025/11/12