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編集長のズボラ料理(137) ハモそうめん

スープはいれなかったが、にゅうめんのようにして食べて良い

 家のすぐそばのイオンで、ハモを買った。生のままで1匹分を骨切りしてあり、600円ほどと安かったからだ。ハモの身は、さっとゆでて冷やし、梅肉で食べることにした。
 なぜ、「身は」と書いたのか。それは骨がついていたからだ。骨はどうするかが、その日の夕食の最大の課題となって急浮上した。それは、なぜか……。
 イオンを出て、歩いて1分30秒で家に着き、ハモはいったん冷蔵庫に入れた。骨に気づいたのは、夕方になってトレイを覆っているラップを外した時だった。
 買い物の最中に気づいたのであれば、ためらいもなくハモすきに決め、骨でだしをとっていたはずだ。ところが気づいたのは夕ご飯を作り始めてからである。鍋に入れるハクサイがない。しらたきもない。タマネギもシイタケも少ししかない。1匹だけで鍋にするには、大量の増量材いるのに、それがない。
 もう1度買い物に行けばいい。しかし、暑さの中で外に出れば、わずか1分30秒でも、半熟状態になってしまう。だから、家にあるもので考えることにした。たかが、骨1本だが、こだわるにはわけがある。
 僕の1番好きな食べ物は米である。家で毎日のように食べる。では、外ではどうか。1番印象に残っているのは、淡路島の沖の沼島(ぬしま)で食べたハモ好きなのだ。わりしたに骨切りをしたハモを入れると、花が開くように身を広げる。その映像が消えない。
 それともう1つは、わりした。ハモの頭と骨でだしをとり、淡路島のタマネギで甘みを出していた。この味がたまらない。
 僕にはハモすき仲間がいる。沼島までは行かないが、淡路島の新島水産という倉庫のような食堂に食べに行った。大阪・福島に支店を出したと聞けば、食べに行く。ただ、今年になってもう1軒、淡路島に支店を出したらしい。僕を除くハモ仲間で行ったという。裏切りである。
 骨は僕の人生では確固たる地位を占めている。だから、たとえ1本でもおろそかにすれば、全人生の否定にもなる。そこで考えたのは、ハモそうめんだった。
 鍋にその鍋にハモの身を入れてさっとゆで、取り上げて冷やす。僕はさらに骨を煮て、少しだけ白しじょうゆを落とす。そこに、そうめんと細切りのシイタケを入れ、最後にワカメを加えて火を止め、入れ物にいれる。
 身は誰かが勝手に食べる。僕はそうめんを食べる。ハモそうめんと書いたが、それは見栄で、本当はハモの骨そうめんである。(梶川伸)

ハモすき 沼島

更新日時 2015/07/31


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