編集長のズボラ料理(117) 大根と貝ひもの煮物
遊び仲間が時々、メンバーの1人の家に集まって、食べる、飲む。女主人の1人暮らしのマンションなので、食べ物を持ち寄ることが多い。
理由をつけては、集合命令がくる。理由がなくても集まる。この前は、理由がある方だった。信州の仲間が大阪に出て来た、という理由だった。遠来の彼は、なぜか信州土産ではなく、阪神百貨店のイカ焼きを買ってきた。
ほかのメンバーも、何か持って来た。70歳を前にして、みんなから名を「ちゃん」づけで呼ばれる女性は、パンを用意した。
僕は日本酒を持っていった。女主人の妹夫婦の奥さんの方が、食べ物を大量に運び込んだり、作ったりする癖があり、食べ物は自重したのだ。
案の定だった。まず、鶏のから揚げの南蛮漬けが出てくる。チーズフォンデュ―をテーブルでやる。その間にパエリアを作り、できたらこれも運んでくる。
さらに大学イモが続く。独特の作り方で、サツマイモを揚げた油を使う。油は減らしたうえで砂糖を入れ、それをサツマイモにからめる。でき上がると、ほかのメンバーははしでイモをつまみ、持ち上げては皿に戻し、カラメルが糸を引くようにする。腕を上げ下げするので、みんなでラジオ体操をやっている感がある。
テーブルが小さいので、料理が乗り切らない。そこで据え付けの棚が置き場になる。準備が整うと、食べる、飲む。食べ切れないので、持って帰る。僕など、食べ物目当てに女性の家に出入りする“ヒモ”のようだ。
では、女主人は何をしているか。料理は作らない。監視をしている。料理の過程で油を飛ばしたり、食べる時にビールを飛び散らかしたりすると、すぐさまイエローカードを出し、自らは床をふく。料理より床である。
その女主人が時々、自分で作るものがある。大根と貝ひもの煮物もその1つ。ヒモのような僕たちへの当てつけが、多分に入っている。
今回は、その料理をいただくことにした。大根は大き目に切る。だしを取り、砂糖、みりん、しょうゆで味をつける。大根が少し柔らかくなったら、貝ひもも入れて、弱火、落としぶたでじっくりと煮る。
貝のひもは、スーパーでいつでも売っているわけではなそそうで、僕は見つけたら買っておくことにしている。ヒモの知恵といえる。(梶川伸)2015.02.07
更新日時 2015/02/07