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編集長のズボラ料理(93) マグロ・酒盗・クリームチーズ

組み合わせも料理の楽しさ

 家で僕が作った料理を、娘が食べていたとする。料理が例えば、コンニャクのカレー煮といったように、娘にとって初めての食べた物だとする。すると娘は必ず聞く。「どこで食べたん?」
 仕方がないから、毎日新聞の現役時代からお世話になっている大阪・北新地のおでん屋さんの名をあげる。「やっぱり」と娘。そして、とどめを刺す。「しんちゃん、オリジナリティーに欠けてるからなあ」
 ただ飯を食べておきながら、生意気な娘である。しかも、「お父さん」などと決して言わない。名前で呼ぶ。親や目上の人を敬う気はサラサラない。
 例えばテレビをかけながら、ご飯を食べていたとする。食べ物屋さんの紹介があったので、ちょっと目をテレビに向けたとする。すると、必ず言う。「しんちゃん、また料理を盗もうとして。オリジナリティーがないからなあ」
 今回のマグロ料理を食べた時もそうだった。「どこの店の?」。仕方がないから、大阪駅前第1ビルの地下の居酒屋さんの名前を挙げた。「やっぱり。しんちゃん、独創性がないから」
 偉そうに独創性と言うが、マグロ料理にそうそうバラエティーがあるわけでもないだろう。そう思って、四国遍路の先達で行った際、高知県奈半利(なはり)町のホテルなはりを昼食場所に選んでみた。ホテルを経営している会社は、もともと遠洋マグロ漁業の会社である。当然。料理はマグロを選んだ。
 ミナミマグロとビンチョウマグロの刺し身、マグロのカマ肉のから揚げ、マグロの卵やマグロのコンブ巻きの煮物、マグロの皮の酢のもの。結構バラエティーに富んでいるではないか。ホテルの玄関前には、マグロのお遍路さんの像まで置いてあった。こんなのは、僕の頭では思いもつかないのだ。
 「やっぱり、僕は独創性不足なのだ。お先、マッグロだ」と落ち込んだ。しかし、独創性と食欲はどうも別物ようで、料理はきれいに平らげた。
 マグロは切り身を使う。カツオの塩辛「酒盗」、クリームチーズを添える。好きな組み合わせや混ぜ方で食べる。これが料理か、と問われと、ちょっと困る面もあるが、発想貧困のぼくには思いつかない組み合わせで、ついついアイデアを盗んでしまった。(梶川伸)2014.07.19

ミナミマグロ ビンチョウマグロ

更新日時 2014/07/19


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