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編集長のズボラ料理(61) メンタイコゼリー

メンタイコを多く入れると辛くなる

 小学校に入学するころ、仙台に住んでいた。2年弱のわずかの時期だが、僕の人生に結構影響を与えている。スジコを覚えたこともそうだ。
 スジコはサケの子である。それはイクラではないか、と思う人がいるかもしれない。イクラは1粒1粒ほぐしてあるのだが、スジコはほぐす前の長細い塊のままで、塩漬けにしてある。子どもにはそぐわない食べ物だから、おやじが好きで、その影響を受けたのだろう。大人になってからも、塩辛い卵をチビチビ食べながら、酒を飲む。
 そのことを、おふくろはよく知っていた。おふくろは年をとっても1人暮らしを通し、住み慣れた場所を変わるのを徹底的に嫌がった。最終的には僕の家の方に来て晩年を過ごしたのだが、それまでの間は、1月に1度の割合でおふくろの家に泊まった。すると、スジコが用意されていた。
 もう1つ、用意されていたものがあった。行けば必ず、「はい、交通費」といって、小遣いをくれた。だから、行けば行くほどもうかるのだった。飲みに行く金が乏しくなると、月に2度、3度と訪ねることもあった。親孝行は、小遣いかせぎでもあった。
 仙台時代の影響なのか、魚の卵は概して好きだ。カズノコも、タイの子も、タラコも。
 大阪駅のそばに、メンタイコで有名な「やまや」が食堂を開き、昼食はメンタイコとからしタカナが食べ放題と聞いた。これは行かねば。仕事仲間とではなく、1人行った。勝負をかけるためである。
 メンタイコは、小さなつぼに入って運ばれてきた。中には2腹か3腹入っている。食べ終われば、お替りを頼む。ちょっと勇気はいる。見れば周りの人は次々と2つぼ目に突入している。勇気が出て、お替りをした。3つぼ目には行かなかったが、メンタイコをたんのうした。ただし、午後からは仕事半分。あとは水ばかり飲んでいた。
 メンタイコを焼いてから、身をほぐす。だしをとって、ゼリーのもとと一緒に熱する。火を止めて、だしが固まり始めたら、内側にラップを張った適当な容器に注ぎ、メンタイコも入れる。カンキツ類のみじん切りを加えても良い。さめたら冷蔵庫に入れて冷たくし、食べる時に取り出して、切って皿に盛る。メンタイコを入れ過ぎると、また水ばかり飲むことになる。(梶川伸)

編集長のズボラ料理

更新日時 2013/11/03


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