編集長のズボラ料理(54) パプリカおにぎり
おにぎりは単純な食べ物だ。それなのに、作る方も食べる方も個性が出る。遍路仲間に、円盤型のおりぎりを作る女性がいる。作り方を教えてもらった。三角おにぎりの要領で握っていくが、角ができないよう、途中経過のおにぎりをクルクル回しながら丸くしていく作業らしい。目が回りそうだ。
僕のおふくろは、いつも俵型のおにぎりだった。そのためか、僕も作るとなったら、俵型が多い。だからかどうか、三角おにぎりを作ると、どうもいびつになる。外側の三角よりも、内側の三角の方が小さくなってしまう。じゃあ、と方向を変えて形を整えようとするのだが、どうも修正がきかない。手が大きいからかもしれないが。
手が小さいくせに、巨大な三角おにぎりを作る女将がいた。毎日新聞の記者がよくお世話になる、大阪市・北の新地のはずれの「大輝」の女将だ。年齢は不詳だが、80代半ばと推測する。
最初に食べた時は、三角なのに目を丸くした。両面に四角いノリが1枚ずつ張り付けてあったのだ。大きすぎて握ることはできない。だから、まな板の上で成形する。中に入れるものを聞くので、タラコを頼むと、3腹入っていた。
飲んだ後のしめに食べるのだから、一口でいいのに、これは拷問に近かった。店にいる間だけではない。タラコ3腹の辛さが、帰宅途中の電車の中でも、余韻として続く。それが名物だった。
「女将がいた」と過去形にしたのは、年が上がるに従って、おにぎりは縮小傾向にあるからだ。90歳を超えれば、一般の大きさに戻るに違いない。
おむすびの中に入れるのも、好みがある。最近ではツナ・マヨネーズが人気らしい。コンビニをのぞくと、2列は並んでいて、堂々としている。僕は買うならタラコか梅干しで、作るならポン酢をかけたチリメンジャコ、みそも使う。場合によっては、塩にぎりにして、冷蔵庫の余りものをおかずにして食べる。和風タイプなのである。
ところが今回は洋風のおにぎりにした。ご飯にコショウをふり、みじん切りのベーコンと乾燥パセリも混ぜ、少ないバターで炒める。温かいうちに、それを塩にぎりにする。パプリカをみじん切りする。色は赤、黄色、オレンジを混ぜると良い。おむすびの両面に張りつけてできあがり。あまり巨大にしない方が良いと思う。(梶川伸)
更新日時 2013/09/16