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編集長のズボラ料理(52) イチジクなます

白と赤の色合いが大事

 僕の住んでいる家の近くでは、イチジクを作っている農家が何軒もある。だから、スーパーでは夏から秋の初めにかけて、地元産品のコーナーにイチジクが並ぶ。安いし、熟したものが多いので、しばしば買う。そして、普通に皮をむいて食べる。
 おいしくても何度か食べれば、飽きてくる。何か違う食べ方はないか。そう思って、いろいろを挑戦したのは、去年のことだった。きっかけは、阪急梅田駅にあったレトルトカレーの専門店で、イチジクカレーを見たからだった。高かったので、買ってはいない。きっと、ルーを作る時に、一緒に煮込んでいるのだろう、と勝手に想像して、財布に手を伸ばさなかかった。
 それならばと、考えた。イチジクにルーをかけても一緒じゃないか、と。そのためにカレーを作って、その一部を切ったイチジクにかけてみた。失敗だった。イチジクだけの方が、100%いいと断言できる。
揚げの中に入れて、きんちゃくイチジクにしてみたらどうか。わざわざおでんを作り、おでん種の1つにしてみた。失敗だった。煮込み過ぎて、イチジクが溶け出した。
 こうなると、止まらなくなる。ソテーはどうか。バターとオリーブオイルで焼いてみた。どっちも、失敗に近い。イチジクだけの方が、よっぽどいい。では、和風の味でと、塩コンブと一緒に炒めてみた。イチジクが甘いので、塩コンブが負ける。天ぷらは? 何も手間をかける必要はない。以前、お店ではイチジクの天ぷらを食べたことはあるが、「家では無理だなあ」と逃げを打った。
 そんなことを話していたら、グルメの友人が、イチジク・コンポートを作ってくれた。いつもながら良いできだったが、僕の求めているのはスイーツではない。あくまでも、おかずなのだ。
 大阪市・弁天町の居酒屋「菜花野」では、ゴマクリームをかけたイチジクを食べた。初めて行った店だったが、メニューの中に見つけて注文した。クコの実も乗っていて、珍しい味だったが、僕が求めているのはデザートではない。ご飯に合うものなのだ。
 カボチャをたくさんもらったので、その一部を漬け物にし、薄切りにして、イチジクをはさんだサンドイッチにした。僕は「まずまず」と思った。ところが家族は「まずいまずい」と言う。「い」が入っているだけで、えらい違いだ。
 塩をふった薄切りダイコンでサンドイッチにしてみた。これでどうだ、と思ったが、まだおかずの数歩手前だった。結局、イチジクはそのままがいいのだ。
 果てしない試行錯誤の末(実際には10日ほどだが)、僕がおかずイチジクに1番近づいてと思ったのは、なますだった。ダイコンをイチョウ切りにする。イチジクもイチョウ切りのようにする。それを三杯酢に漬ける。ニンジンも加えてもてもいいが、ダイコンの白と、イチジクの赤だけの組み合わせの方が良い気がする。何や、誰でも思いつくやないか。簡単、簡単。何で回り道をしたんや、と悔やむ。(梶川伸)

編集長のズボラ料理 菜花野

更新日時 2013/08/27


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