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地域医療を聞く⑥坂本勇二郎・医療法人篤友会理事長

学生時代はラグビー部やボート部に所属したスポーツマン。今の趣味は昆虫採集で、特にギフチョウを追いかけている。「病院のスタッフでバンドを組み、患者さんたちに披露もします」

 医療法人篤友会は、坂本病院(豊中市豊南町東1)、関西リハビリテーション病院(同市桜の町3)など、豊中市内で4つの病院を経営する。坂本勇二郎理事長は、「豊中の急性期医療は昔から充実していたが、その受け皿となるリハビリ型や療養型の病院は少なかった」と話す。
 医師人生を救命センターでスタートさせた坂本さんは、「まずは命を救うことが大事」と考えたが、ある時お礼に来た女の子が足を引きずっているのを見て、「助けるだけではダメだ」と感じた。その後、整形外科に勤めた際も、ただ骨折を治しただけでは、入院生活で落ちた筋力も戻らず、日常生活に支障をきたすことに気付く。「では、入院期間を延長してリハビリをしようとしても、それは難しい。リハビリに1番必要なのは患者のモチベーション。それには専門スタッフや、同じ境遇の患者がいて、互いに頑張り合う環境を作らないといけない」と考え、関西リハビリテーション病院を設立した。
 坂本病院は終末期の患者を看る。そこには確固たる考えがある。「今は死のあり方についてさまざまな意見がある。死の苦しみは、時間ではない。それまで普通だったことができなくなること、その落差が大きいほど苦しみは強まる。落差の傾きを緩やかにし、できる限り穏やかな死を迎えさせるのが、医師の務めではないか」。終末期医療はいらないと宣言する人も少なくないが、坂本さんは価値観の多様性を認めた上で続ける。「元気な時と、死に臨んだ時、状況が変われば考え方が変わるのは当然。人の気持ちは変化する。そうでなければ、離婚する人もいないはずでしょう」
 入院患者は事前に、坂本さん自身が必ず面談し、最期の時をどう迎えるか、家族を交えて話し合う。「私たちが目指すのは参加型の病院。医療の専門的な部分はスタッフが行うが、手を握る、つめを切る、車椅子で散歩するといった日常のことは、家でいるのと同じように、家族にしてもらいたい。そして、できる限りお孫さんに一緒にいてほしい。自分の親が、その親を介護し、看取る姿を見た子どもは、大人になった時に、きっと同じことができる」。
 家族にとっても居心地のよい場所でありたいと考え、ロビーは一般的な病院のイメージを払拭し、京都の町家風にしている。(礒野健一)
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」第52号(2013年5月9日)

更新日時 2013/05/08


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