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地域医療を聞く①眞下節・市立豊中病院総長

医師を目指したきっかけは父親の病気。「父は結核で2回死にかけたことがあります。父を救ってくれた先生は、子ども心にもありがたくてね」

 豊中市に豊中市病院連絡協議会という組織がある。豊中市の国公立病院や私立病院が互いに協力し合い、地域に根差した医療体制を作ることを目的に連携を取っている。市単位の協議会を結成した例は大阪府内では唯一で、全国的にも珍しい。

 協議会は1962年、豊中市病院懇話会という名前で発足した。豊中市庄内幸町4、医療法人善正会「上田病院」理事長の上田正規さんが「医療機能を分担して連携することによって、地域内で完結した医療供給体制ができるようにしたい」と訴えたのが始まりだった。協議会の現会長で、市立豊中病院の総長でもある眞下節さんに、地域医療のあり方について聞いてみた。

 「『連携』というのは、現在医療のキーワードだと思います」

 治療を終えた患者が元の生活に戻るにあたり、1番重要になるのが病院間の連係だと、眞下さんは考えている。

 従来は、市立豊中病院のような大きな病院で手術をした患者は、退院した後の治療や行き先などについては個人で探さねばならなかった。医師に紹介してもらうこともあったが、それはあくまでも医師個人の好意によるもので、病院が行っていたものではない。連絡協議会が発足し、地域の医療連携が整いつつある今は、病院は治療が終わったからといってそのまま退院させるのではなく、必要に応じてリハビリ専門病院や地域の小さな診療所にカルテを送り、退院後の治療をスムーズに行えるよう取り計らっている。これに加え、市立豊中病院では2005年に登録医制度をスタートさせた。かかりつけ医とともに患者の治療にあたる「2人主治医制」のことで、患者側からすると、市立豊中病院の医師と、なじみのかかりつけ医の両方の治療を受けられる。

 眞下さんは大阪大学医学部を卒業した後、海外研修などを経て約30年、麻酔科の医学博士として大阪大学病院に勤めた。現在は市立豊中病院を地域医療支援病院としていかに充実させるかに奔走している。そのうちの1つはがん治療だ。

 「がんというと、まず外科手術と思いがちですが、進行によっては手術が万能というわけではありません。海外では放射線治療が日本よりずっと多いのです」

 しかし放射線の専門医はまだ少なく、眞下さんが大阪大学病院にかけあい、ようやく市立豊中病院でも2014年度から放射線専門医が常勤することが決まった。今後は自身の専門である麻酔治療も充実させ、痛みを取る「ペインクリニック」にも力を注ぎたいと願っている。「中核病院としていい医者をそろえないと」と眞下さんは先を見据える。

(早川方子)
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」第45号(2012年11月8日)

更新日時 2012/11/10


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