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地域医療を聞く⑤ 岡部聡寛・上田病院院長

群馬大学医学部卒。東京女子医科大学東医療センター外科、新潟県立がんセンター外科、東京都立府中病院救命救急センター、大阪大学医学部乳腺内分泌外科を経て、上田病院長

 豊中市庄内幸町4、医療法人善正会上田病院の岡部聡寛さんは、2009年4月に院長に就任した。それまでは大学病院や救命救急センターなど大きな病院に勤務し、手術も数多く手掛けた。院長に就いて丸4年。94床の規模の病院にいて、地域の診療所や患者からの信頼度に差を感じるという。「同じ医者が診ているのに」と、口惜しい思いをしている。
 岡部さんは乳腺外科が専門。「しこりがあったら、患者さんは最初から専門医やがんセンターに行きたがるでしょ」と前置きして、「そうではなくて、まず上田病院に行けば、何とかしてくれる」と言われるような病院にしたいと考えている。「信用や信頼をどう育てるのか」が、今の課題だと語る。
 では、どうするのか?と言えば、岡部さんは「人として当たり前のことをするだけ」と謙虚な姿勢は崩さない。上田病院では、医者や看護師など働くスタッフは、人間性を重視して採用している。「経験、技術はもちろん必要。だけど、それ以上に人間性は大事」という考えがある。
 また、医者として1番難しいのは、病状を見極める力をつけることだと続ける。体に異変を感じた時、相談できて、すぐに診てくれる地域の病院に求められるのは、岡部さんの描く理想の医者像と重なる。理想像は「総合診療ができて、医者がそれぞれの専門分野もじっくり診療する。状況に応じて最適な専門医を紹介する」こと。
 1つの病院ですべての医療は施せないからこそ、豊中市内の病院が連携している組織「豊中市病院連絡協議会」が大きな役割を果たしている。「実際に協議会の中に入ってみて、豊中の医療体制のすごさを実感しているのが正直なところ」だという。他の地域より進んだ医療体制に驚きながら、つながりが弱い病院もあると、問題点を指摘する。
 「顔を知らない医者に、患者さんを紹介するのは無責任でしょ。病院や診療所と、顔が見えるつながりをもっと強固にしたい。もう少し診療所とつながりができれば、急性期、回復期、療養型、在宅など、病状に合わせてスムーズに引き継げるはず」と話す。「患者さんが行き場所がないと困ることもなくなる」と、岡部さんは患者目線で、地域に根差した医療と向き合おうとしている。(進藤郁美)
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」第50号(2013年4月11日)

更新日時 2013/04/10


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