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編集長のズボラ料理(37) しば漬けサバずし

しめサバは大き目のものを使った方が、それらしく見える

 ユズが好きだ。以前、徳島に住んでいたことがある。徳島といえばスダチで、それも大好きである。しかし、僕にとっては木頭村のユズの味が上回り、そうなると表現としては大大好きということになる。ダイダイも好きだが、そこは漢字で書かないと、こんがらがる。
 お遍路さんのために休憩所を造る活動「四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」があり、僕もお手伝いをしている。主宰者は建築家の歌一洋さん。徳島県海陽町の出身で、木頭村ほどの産地ではないが、実家はユズを作っている。
 活動の打ち合わせのために月に1度、大阪市・南船場の事務所に集まる。年末の例会がうれしい。歌さんが、実家で絞ったユズを瓶に入れ、プレゼントしてくれるからだ。僕など、「娘が好きなので」と、2本もねだったことがある。
 例会の後は、場所を変えて反省会をする。僕も含めて4人のことが多く、酒を飲みながらなので、4悪人と言われる。
恥ずかしい思い出がある。いい気分で連れだって帰る際、地下鉄で1人が首をかしげた。ユズの臭いがする。瓶を入れたバッグを調べると、栓がゆるんでユズが大量に漏れていた。酸っぱい臭いが車内に充満して、迷惑をかけた。僕は「反省が足りない」と、ピシリと言った。
 さて、僕。家に帰り着く20メートル手前で突然、手にしていた紙袋の底が抜けた。中に入れていたユズ酢の瓶は、地上に落ちて、見事に砕け散った。栓がゆるく、振動で中身が漏れ、紙袋の底を濡らしたせいだった。家にはユズの臭いだけを持ち帰った。反省が足りなかった。実は2人とも失敗を歌さんには伝えず、ひたすら翌年のユズまで待った。
京都の柚子屋(ゆずや)旅館で、ユズ雑炊を食べた。雑炊の前に、京都らしい食べものが1口分ずつ出てくる。その中に、しば漬けをはさんだサバの押しずしがあった。ためらいなくそのアイデアをいただき、家で作ってみた。
 パックに入ったしめサバと、しば漬けを買ってくる。ユズ酢も使って酢飯を作る。ラップを広げて、しめサバ、しば漬け、酢飯を乗せる。ラップを巻き、手で押さえながら棒ずし状にして、しばらく置くだけ。手間をかけた老舗の味ではなく、ズボラもズボラ。アッ、ユズの皮を刻んで入れるのを忘れた。(梶川伸)

柚子屋旅館

更新日時 2013/01/11


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