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編集長のズボラ料理(31)ベーコンのズッキーニソース

赤、黄、緑と色が揃えば見た目がきれいだ

 四国には、「お接待」という文化がある。お遍路さんをもてなすことだ。僕のように遍路をする者から言うと、食べ物や飲み物をいただいたり、休憩させてもらったり、親切をいただくことを意味する。
 愛媛県今治市の大島に、四国八十八カ所を模したミニ八十八カ所がある。ミニとはいっても、距離は60キロあり、歩いて巡拝すれば3日かかる。島は年に3日、お接待をする日を決めているので、この日に合わせてお遍路さんが歩く。
 毎日新聞旅行の遍路旅の案内人で、2年続けて大島に行ったことがある。島あげてのお接待には、びっくりした。88の札所には必ず接待所がある。それ以外の場所にもあるので、100カ所は超える。そこで、いただいたものは……。
 飲み物はお茶、乳酸菌飲料、ビール、酒、野点の抹茶。食べ物は菓子、スイカ、ミカン、うどん、おにぎり、揚げたての天ぷら。挙げだしたらきりがない。
 お接待は断らないのが原則だ。だから、朝から酒やビールも飲んだ。どちらかと言えば好きなので、原則を忠実に守って、どんどん飲んだ。食べきれず、飲みきれないと、どうなるか。いただき物が増えていく。そこで、みんな大きなビニール袋を用意する。すべての接待所で原則を通せば、袋に半分になる。それを持って歩くので、まるで白装束のサンタである。
 機転がきく人がいた。土産物屋に寄って少し買い、お接待の品と一緒に自宅に宅配便で送った。もっとしたたかだったのは、旅の添乗員だった。1年目でお接待の量の多さを知ったので、2年目は昼ご飯を「自由食」としたのだ。何のことはない。昼食を用意しなくても、お接待でお腹が一杯になるだろうという、ちゃっかりした判断である。
 遍路仲間も、遍路の途中でお接待をし合う。先日もたくさんもらい、家に持ち帰った。その中にスモモとトマトがあった。大阪に帰って2日ほどして、仲間から緑と黄色のズッキーニをもらった。その使い道が、今回の料理である。
 厚めのベーコンの両面をフライパンで焼く。油は使わない。そのフライパンにオリーブオイルをたらし、ズッキーニ、トマト、スモモの小口切りを入れて炒め、コショウと塩、漬け込んだドライトマトも加えて味を調える。それをソース代わりにして、ベーコンにかける。(梶川伸)

今治市大島

更新日時 2012/07/17


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