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編集長のズボラ料理(25)フキノトウと豆腐の混ぜ焼き

豆腐の円盤に味付けをしても良いが、フキノトウは苦味が命なので薄味がお勧め

 奈良県天川村出身の友人がいる。彼の案内で、天川村に山菜摘みに出かけたことがある。
 ヤマウドには感激した。彼はヤマウドを土から引き抜いた。茎は土でよごれていた。それを近くのせせらぎで洗った。その時の驚きを、建物のリフォーム番組「ビフォー アフター」風に書いてみる。
 「何ということでしょう。汚れたヤマウドは、真っ白く変身したのです。せせらぎには、ヤマメが泳いでいるではありませんか。口に運んでかんでみると、メンソレータムかタイガーバームのような強い香りがするのです。」
 その夜は、バンガローに泊まった。夕食は山菜パーティー。タラの芽の天ぷらがあった。ほかにも山菜の天ぷらがいくつもあったが、当然のことながら食べることと飲むことに集中し、名前はすぐに忘れてしまった。友人の母親は、イタドリの炒め煮、大豆をつぶしてコンニャクとあえたものを用意してくれていた。
 天川村に泊まったメンバーは毎月、奈良の居酒屋で例会を開く。僕も含め、そのうちの3人は同い年である。だから、ほぼ同時期に定年を迎えた。定年後をどうするか? 例会で意見が一致した。退職金からわずかばかりを持ち寄り、その金で何かしよう、ということだった。
 出資はした。みんな奈良が好きだから、名前も決まった。「奈良御用達承り所」。看板も作った。
 大事なことが決まらない。何をするか、だ。一時は、友人の料理の腕を頼りに、天川村で民宿のまねごとをしよう、という意見に傾いた。しかし、天川村に実際に行ってみて、「誰も来んで」の声が圧倒的で、断念した。
 例会は延々と続いている。議題はいつも、「何をするか」だ。そのうち、「何をするか」は集まる口実になり下がった。そして間もなく5年になる。何をしようかなあ。みんなと酒でも飲んで考えるとするか。そうなると、例会が待ち遠しい。
 今回のズボラ料理は早春の山菜、フキノトウを使う。豆腐1丁を水切りしてつぶす。フキノトウ1束を細かく切って混ぜ、ユズの皮も少し刻んで入れる。卵の白身、カタクリ粉、塩を入れて混ぜ、円盤状にしてフライパンで焼く。大根おろしで食べる。苦みを味わいながら考える。何をしようかなあ。(梶川伸)

天川村

更新日時 2012/02/06


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