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編集長のズボラ料理(835) ポテサラギョウザ

味が物足りなければ、普通のギョウザのようにたれをつけて食べてもいい

 酒を飲んだあとは、何となくか締めたくなる。締めはラーメンが定番だが、何でだろう。
 勤めていた毎日新聞の本社は以前、大阪市・北新地の入り口にあった。裏口から直結なので、飲みに行く基地でもあった。そのうえ、屋台のラーメン屋さんが裏口の横に店を出していた。締めがラーメンになるのは、当然の流れだった。
 毎日新聞と新地の関係は、深すぎた。僕を含め、社会部の記者が入りびたった居酒屋さんがあった。そこの女将(僕は「おばちゃん」と呼んでいた)が亡くなった時、会社のホールで忍ぶ会を盛大に開いた。会を提案し、会社の協力を取り付け、仕切ったのは、店の常連の代表だった先輩で、「何十年ものつけを、退職金で払った」と言われるほどの豪傑だった。
 支払いを大幅に延ばしていた先輩のせめてもの償いだったに違いない。もちろん、僕も手伝ったが、退職時点ではつけはなかった。当たり前である。
 娘婿と時々、飲みに行く。先日は昼飲みで、お互いの最寄り駅から4つ目の近鉄奈良駅で待ち合わせた。店は彼が探した駅前の居酒屋さん「ゆるり」。客はほかにはなく、脱サラの大将も僕らの話に入ってきた。
 自動車の営業マンだった。「車が1台売れたからといって、営業がうまくいったわけではない。そのお客さんが次に買い替える時、自分を指名してくれて初めて成功と言える」。そんな深い話も交えながら、ゆるりと飲んだ。
 さて、まだ午後2時すぎ。締めがいる。娘婿の場合は、たいてい決まっている。ギョウザなのだ。
 奈良駅の1つ手前の新大宮駅で集合し、「焼肉ホルモンかむら精肉店」で、安いホルモン盛り合わせをあてに、レモンサワー30分飲み放題500円に挑戦したことがある。この時は、すぐそばの「一口ぎょうざの頂」で締めた。
 大阪市・千日前の店「ひょうたん」でハンバーグの串カツをあてに飲んだ。締めは珉珉のギョウザだった。
 ゆるりの次はためらいなく、近くの王将に入った。やがて働いている娘から連絡があり、早帰りだという。やむをえず、ギョウザで締めるルールをあきらめ、3人はお好み焼き「風月」で合流する意外な展開になってしまった。
 家にギョウザの皮があったので、簡単変わりギョウザを作った。包む具も冷蔵庫にあるものばかり。ジャガイモをゆでて皮をむき、ボウルに入れてつぶす。タマネギをスライスして、さらに小さく切る。ベーコンを小さく切る。ゆで玉子も小さく切る。これらもボウルに入れ、コショウ、塩、マヨネーズを加えて混ぜ、ポテトサラダを作る。これを皮で包み、ギョウザと同じようにフライパンで蒸しながら焼く。
 新地の店はおばちゃんの姪が継いだ。僕は定年後も通う。つけをすることもある。ボーナス払いで。月給もボーナスもないのに。先輩を批判することはできないなあ。(梶川伸)2025.11.03


更新日時 2025/11/03


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