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編集長のズボラ料理(733) はるさめとキクラゲのサラダ

具材は好きなもので

 平日の午前7時40分、うちの前の小さな花壇を目掛けて、小学2年生の女の子、みのりちゃんが走ってくる。「おはよう」と言いながら。
 花壇は小学生の集団登校の集合場所になっている。出発は7時55分。その時間帯に、花の手入れをすることにしている。
 花壇には20人ほどが住んでいる。100円ショップで買ってきた首振り人形で、小さな太陽電池で動く。残念ならが、最近はこの人形を100円ショップで売っていない。当初から100円では無理ではないかと思っていたが、そうなのであろう。
 新人が入居しないので、花壇の住人は高齢化が進み、体にガタがきて、首が動かなくなってきたメンバーも多くなった。それでも子どもたちには人気がある。全員を1カ所に集めたり、整列させたり、逆にバラけさせたり、雨が降っていたら花や葉の下に雨宿りさせたり。
 みのりちゃんは最近、ドングリ持ってくることがある。それを順番に住人に食べさせる。時には、住人のひざの上に置いて、学校に行く。学校からの帰りに、また家に持って帰る。住人はお腹がいっぱいで、食べられなかったのだろう。あるいは、おいしくなかったのか。
 シイの実は食べたことが、ドングリはおいしいとは思えなかったから、食べたことはなかった。ところが、韓国料理の店で、「ドングリのムク」を食べる機会があった。ドングリのでんぷんで作った餅のような食べ物だった。何だ、ドングリは食べられるのだ。そのことをリスや熊は知っているが、花壇の住人はそれを知らないのかもしおれない。
 遊び仲間の1人は韓国冷麺の麺の原料が、ドングリだと信じている。だから冷麺は口にしない。僕が食べたムクは平たい四角形だったが、麺のような形をしたものもありそうで、それがドングリ冷麺に結びついたのだろう。
 ドングリをズボラに使うのはハードルが高すぎるので、はるさめで代用することにした。安易な方向転換である。
 乾燥はるさめをゆでて、しばらくおく。キクラゲはゆでて、細く切る。ワカメはサッと湯に通し、細く切る。ポン酢に梅肉を加えてよく混ぜ、ハルサメ、キクラゲ、ワカメを和える。皿に盛り、上にカイワレを散らす。
 みのりちゃんは背が低い。だから通りかかった大人はよく、「1年生?」と聞く。みのりちゃんは「2年生」と答える。こんなやりとりを見るのも、花の手入れをする楽しみの1つである。(梶川伸)2024.05.25
  

更新日時 2024/05/25


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