編集長のズボラ料理(717) 高菜と牛肉のゴマ油炒め
高菜といえば、めはりずしを思い浮かべる。浅漬けの高菜で包んだおにぎりのこと。和歌山県の名物として知られる。
実は酢は使っていない。しかも、質素な食べ物。それでも「すし」という名前にしているのは、すしの「ごちそう感」によるものだろう。
遍路には何度か行ったが、最初に泊まった遍路宿の夕食は28年前のことだが、今でも覚えている。徳島県の田舎の「寿食堂」という宿だった。夕食は魚介の入っていないちらしずしと、1人用の小さな鍋が中心だった。鍋の1番上には、エビが一尾ちょこんと乗っていた。すしとエビは、安い宿泊料で精一杯もてなしだったのだろう。「寿」という言葉と結びついて印象深い。
高菜といえば、漬け物に結びつく。ラーメンに乗っているのもそうだし、高菜チャーハンもそうだ。
新聞記者現役時代、職場が西梅田にあり、歩いて10分ほどの中華料理店「みわ亭」で、何度か昼ご飯を食べた。人気は「エビのピリ辛ソースランチ」。大き目のエビを天ぷらにして、それに甘辛くてピリ辛のソースがかけてある。卵スープ、スパゲッティーのサラダがセットになり、さらに高菜がついていた。中華でもやはり漬け物だった。
高菜は漬け物と思い込んでいるので、生の高菜を買ったのは2回しかない。1度目は高知県室戸市の道の駅で。室戸市産の「子持ち高菜」と表示してあり、「子持ち」の言葉に引き寄せられた。ナンジャラホイ、である。
1つ1つ小さく、太い茎に緑の葉の部分がチョロチョロとついている。小さいから「子」なのか、チョロチョロだから「子」なのか。わからないまま、スライスしてゆで、酢みそをつけて食べた。
2回目が今回。自宅近くのスーパーになぜか、徳島の農産物を置いているコーナーがあり、そこで売っていた。安かったので買ってみたが、さてどうするか。冷凍庫を開けると、残った牛肉の切り落としがあった。簡単なのは、炒めること。ズボラの原点に立ち返った。
高菜は茎と葉に分け、食べやすい大きさに切る。フライパンにサラダ油とゴマ油をひき、牛肉と茎を炒める。味付けはだしの素、砂糖、酒、しょうゆ。火が通ったら葉も入れて炒め、皿に盛って、ゴマを振る。
実は失敗を恐れて、高菜は半分だけ使った。残りは浅漬けの素に漬けた。2日たって、ご飯と一緒に食べた。それなりだったが、目を見張るほどではなかった。(梶川伸)2024.03.07
更新日時 2024/03/07