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編集長のズボラ料理(689) ふりかけ卵豆腐

ふりかけは多めに

 「豆腐」とつくものを考えてみる。湯豆腐、焼き豆腐、揚げ豆腐、麻婆豆腐。これは料理の名前。
 木綿豆腐、絹豆腐。これは製造方法の名前。島豆腐は沖縄の豆腐だが、一般的な豆腐の製法とは違うようだ。
 何でもそうだが、作り方や、作り人の力量、こだわりによって味が変わる。そのことにちなむエピソードを紹介する。
 大津市で「はしがき」という豆腐屋さんを営んでいる知り合いがいる。先日、前を通ると、店はなくなっていたが。
 その店の豆腐が気に入ったので、彼に尋ねたことがある。「水がいいのですか?」「違う。普通の水」「原料の大豆がいいのですか?」「違う。普通の大豆」「では、何が?」「腕です」
 彼は豆腐料理の店も併設していた。ただし、午後8時には閉店する。はやっていたようなので、「何で?」と聞いてみた。「朝が早いので」。職人らしい答に感心した。
 職人のおもしろさも経験したことがある。友人と料理を食べに行った時だった。彼は喜んでくれて、日本酒をサービスしてくれた。持ってきたのは越乃寒梅。プレミアがつくほど人気の時期だった。
 友人はほとんど酒を飲まないし、日本酒のことも知らない。ちょっと口にして、感想を言った。「おいしくないね」
 豆腐屋の彼は焦った。次から次へと、違う銘柄を運んできた。友人は下戸だから、「おいしい」とは言わない。僕は酒好きだから、大いに喜んだ。
 高野豆腐も製法の違いだが、普通の豆腐とは別物になる。ゴマ豆腐、杏仁豆腐は、豆腐に似ているので、豆腐の文字を使っている。大阪市・天神橋商店街にあった天ぷら屋さん「天平」には、白豆腐があった。何もむだにしない店で、卵の黄身を使ったあと、残りの白身を固めて、白豆腐と名づけていた。
 玉子豆腐も、豆腐とは別物だ。それにさらに変化を与える。市販の卵豆腐を皿に乗せ、たれもかける。その上にサケのふりかけをタップリふる。「ふりかけ豆腐」と名づけている。
 天平の真骨頂は、大根ジュースだった。天ぷら屋さんなので、大根おろしはよく使う。その際、水分はのぞく。その水分を集めて、大根ジュースとして出していた。1杯50円。店で1番安いメニューだった。(梶川伸)2023.10.02

更新日時 2023/10/02


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