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編集長のズボラ料理(688) 鶏むね肉の素揚げショウガたれ

切り込みは深めがいい

 讃岐うどんの薬味は、七味唐辛子ではなく、おろしショウガである。僕は高松市で1年5カ月生活したから、「うどんにはショウガ」派になってしまった。
 大阪にはショウガ文化がないかというと、そうでもない。居酒屋さんに行けば、紅ショウガの天ぷらがある。ほかでは見ることのない鮮烈な色の食文化。
 大阪府池田市のうどん屋さん「吾妻」に行けば、名物のささめうどんがある。あんかけうどんで、刻みあげ、ミツバ、すりゴマ、かまぼこ、塩コンブ、おろしショウガが入っている。
 讃岐うどんのせいばかりではないが、僕はショウガ好きである。大阪市・鶴橋で蒸し豚を買うと、カラシしょうゆではなく、ショウガしょうゆで食べる。ズボラ料理でも、ショウガと白ネギのかき揚げを作った(669回)。実は白ネギも好きだから、最強のコンビといっていい。
 新聞記者をしていた若いころ、夜遅い仕事が終わり、同期の同僚と会社からタクシーに相乗りして帰ったことがある。先に同僚の家に寄るのだが、そこで一杯飲ことになった。
 奥さんが「何も酒のあてがないので」と言って、ササッと作ってくれたのが、白ネギをぶつ切りにして焼き、しょうゆをかけ、カツオ節を振ったものだった。以後、白ネギの大ファンになった。
 僕らはご機嫌だったが、奥さんにとってはえらい迷惑なことだった。友人宅に着いたのは、午前1時前。もちろん、奥さんは寝ていたのに起きてきた。非常識な話である。
 罪滅ぼしに、友人夫妻を自宅に招いて飲んだことがある。その時、奥さんは変わった土産を持って来た。パジャマだった。ウーン、真夜中の非常識訪問を下敷きにしていたに違いない。
 鶏むね肉の両面に、包丁で十字の切り込みを入れる。塩、コショウをふって、揉み込む。しばらくして、油でゆっくりと素揚げにし、皿に乗せる。フライパンに油をひき、細かく切ったショウガと白ネギを大量に入れて熱し、香りが立ったら水、みりん、酒、醤油を加えて煮詰めていき、これをソースとして、鶏の上にかける。
 新聞記者は酒飲みで非常識な人間が多かった。かの元同僚は今は高松市に住んでいる。先日、電話があった。「所用で大阪・十三のホテルに泊まる。翌日飲もう」
 十三は酒飲みには良い場所で、午前10時から飲んだ。大阪駅前からバスで高松市に帰ると言うので、十三、天神橋、梅田と転々とし、午後3時過ぎまでに計5軒。非常識なやつである。(梶川伸)2023.09.26

更新日時 2023/09/26


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