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編集長のズボラ料理(680) コンブ味キュウリ

トロロコンブは多めがいい

 電車に乗っていて、近くに座っていた女性の会話が耳に入ってきた。キュウリの話題だった。
 「近くの人が菜園をやっていて、キュウリをよくもらって困ってる。食べきれないうえ、大きくなって種だらけのもある。断るわけにもいかないし、たまにはお返しもしなければいけないし」
 あげた人にはかわいそうな話だ、と思いながらも、うなづけるところもある。元同僚が定年後、畑作業に精を出し、収穫したものを時々送ってくる。その中にキュウリもある。それも大量に。
 彼は農業をして店に出しているわけではないから、キュウリの大きさもマチマチだ。食べ切れないからご近所さんにもおすそ分けするが、その時はできのいいものを選ぶ。
 自分で食べる時も、頃合いのものから使う。だんだん大きいものが残っていき、日も経ってくるので、浅漬けの素で漬けることになる。この夏は浅漬けの素1本では足らず、2本目でやっとキュウリを完食した。
 漬け物しても、少し大きいキュウリは案外うまいと思う。ただ、巨大化したものは種だらけで、ちょっと二の足を踏む。そんな時は輪切りにし、よく絞って、水分とともに種を押し出すことにしている。元同僚の善意に応えるために、学んだテクニックである。
 女性の会話のもう1つの要素、「たまにはお返し」の点だが、僕にとってこれは簡単なことだ。「今度、大阪に出てきたら、新地でおごるわ」。決まり文句を持っているのだ。
 彼は愛媛県宇和島市に住んでいる、だから、大阪まで来ることはまずない。もし出てても大丈夫。新地に行くが、行きつけは料亭ではなく、おでん屋さんだから、何とかなる。
 ただ、長い間会っていないから、「たまにはお返し」で缶ビールを送る時がある。「愛媛の田舎では、ビールを売っていないだろう」が決まり文句だが、敵もさるもので、「缶ビールより、新地の高級料亭の瓶ビールがいい」と粘る。
 キュウリはゼブラ状に皮をむき、拍子木切りにする。コンブ茶をまぶし、しばらくおく。木の芽か大葉の千切りと混ぜてから皿に盛り、トロロコンブをかける。
 今年はお中元として缶ビールを送った。お礼の電話がかかってきた。わざわざ北海道から。友人3人で車旅をしているのだという。ビールが届いたのは、奥さんから連絡があったらしい。そんな元気があるなら、大阪に出てくる恐れがある。いよいよ本気で新地対策を考えねば。(梶川伸)2023.8.155

更新日時 2023/08/15


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