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編集長のズボラ料理(658) 大根とリンゴと生ハムの酢の物

スケスケ感が命

 散歩道に田畑がある。冬は大根をよく見た。
 冬の大根畑は、緑が地面を覆っている。葉を元気よく広げているからだ。白い大根は緑の下に隠れていて、ほとんど見えない。
 大根は順場に抜かれ、出荷される。春が近づくと、緑にすき間ができて、白い大根が見えてくる。中には、先の方が2つに分かれて、人間の足に見えるものもある。それを写真に撮った。
 その写真を先日、フェイスブックに投稿した。すると友人が「いろっぽい」とコメントした。ニンジンでも時々見かけるが、そうは感じない。その違いについて友人は、大根は「リアル」と書いていた。
 大根の白は、女性の白い肌を思わせる。足も連想させるが、決して男性ではない。自分の足を見て、そう確信する。
 僕は暇だから、よく散歩する。夏は暑いから、半ズボンで歩く。そうすると、日に焼けて足は黒くなる。サンダル型の靴を履くので、足の甲の帯の部分の下は日に焼けることはない。つまり、日焼けの跡が、縞模様になる。
 江戸時代の流人は腕に島模様の入れ墨を入れられたが、まるでそれを足に変えたようで、色っぽさとは対極にある。
 大根の2つに分かれた足を、再度ながめる。がに股でスックと立っている形はすくない。ほとんどは内またでミジモジと恥ずかしそうにしている。これがも女性をを感じさせる。
 果物や野菜で、ほかにも女性に結びつくものがある。「リンゴのほっぺ」は、冬の寒い日に、子どものほっぺたが赤くなっている様子を言う。これも男の子より女の子の方を連想する。 
 桃はお尻に例えられることがあるが、男のお尻と思うと、かぶりつく気にはならない。おっぱいのサイズで、スイカップという言葉も生まれた。
 大根は薄切りにすると透けて見えるようで、白い絹の衣のような風情がある。今回はそんななまめかしさを狙った。
 大根は細めのもの選び、皮をむいてスライサーで薄切りにし、軽く塩をふる。リンゴは縦4つに切り、皮をむく。薄切りにして、色がかわらないようにごく少量の酢をまぶす。薄切りの生ハムを食べやすい大きさに切る、白ばかりなので、彩りにして、なまめかしさを出す。3つを混ぜ、酢と白だしで和える。
 足の甲の縞模様だが、冬を超えても残ている。間もなくまた、サンダル型の靴を履くシーズンになるから、入れ墨は永遠に続く。(梶川伸)2023.04.13

更新日時 2023/04/13


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