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編集長のズボラ料理(597) 豚肉ゴロゴロ焼き飯

盛る時は豚肉を上の方にして、ゴロゴロ感を出す

 雷は嫌いだ。ピカッよりも、ゴロゴロの方がもっと嫌だ。しかし、こんな人間に雷はいたずらをする。
 毎日新聞旅行の熊野古道1泊旅の4回シリーズで、案内人を引き受けたことがある。世界遺産になっている昔からの道だけを歩き、ほかはバスで移動する気軽な旅。
 中辺路を行く回だった。牛馬童子、近露王子を快適に歩いたが、比曽原王子のあたりから雨になった。継桜王子に向かう途中で雨足は激しくなり、ついに雷の大音響が響いた。
 学校で習ったことを思い出した。音は秒速340メートル、光は1秒で地球を7回り半。だから、稲光は発生からほぼ峻険で見えるから、雷鳴までの時間で雷の近さがわかる。恐怖のせいか、わずか1秒ほどに感じた。近い、非常に近い。怖い。
 案内人だから怖がってばかりもいられない。強がって道を急ぐよう指示したが、実は心臓がバクバクしていた。
 次の光から1、2、3と数を読み、次第に数が増えていったので一安心した。その代わり、経験したことのない大きなあられが降ってきたが、雷よりはましだった。
 奈良県の修験道の山・大峰山に取材で登った時も、雷に遭った。身を隠す場所がない。修験者は「懺悔(さんげ)、懺悔、六根清浄(ろっこんしょうじょう)」と唱えながら登るようだが、僕もいつの間にかその言葉を口にしていた。怖いの何の。
 遊び仲間で福井県の気比の松原に行った時も。雷鳴とともに、近くでパチッと音がした。傘を持っていた友人の手に、小さな栗い点ができていた。友人に言わせると、僕は少し青く光ったらしい。持っていた傘はおちょこ(逆さま)になっていた。この場合は怖さを感じる前に、すべてが終わっていたが、ともかくゴロゴロはいやだ。
 食べ物になると、ゴロゴロは悪くない。レトルトカレーに肉がゴロゴロ入っていたら、ちょっとうれしくなる。イオンのタスマニアビーフカレーや平和堂のあじわい牛ビーフカレーは時々買う。レトルトにしては肉が大きく、ゴロゴロ感に満足するからだ。
 今回は焼き飯だが、ゴロゴロ感を出すことにした、豚カツ用の肉をゴロゴロの大きさに切り、フライパンでゴロゴロ回転させながら焼く。味つけはコショウと、酒、しょうゆ少々。豚肉はいったん取り出す。ボールにご飯を入れ、卵を割り入れて混ぜる。鍋に油をひき、卵ご飯を軽く炒め、これもいったん取り出す。キャベツ、タマネギを細かく切り、フライパンで炒める。量は多くする。味つけは砂糖、塩。火が通ったら豚肉、ご飯も入れ、刻みネギも加えて炒め、最後にニンニクしょうゆ(なければしょうゆ)を回し入れて、サッと炒める。
 高松市勤務だったころ、世話になったおでん屋さんおのおばちゃんは雷が好きだった。ゴロゴロが聞こえると店を出て、稲光を見ていた。こんな人は珍しい。雷好きの人には、雷も悪さをせず、光のパフォーマンスで応えるのだろう。(梶川伸)2022.05.01

更新日時 2022/05/01


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