編集長のズボラ料理(593) カツオのたたきの大根・大葉巻き
友人に四国遍路の大先達がいる。四国霊場を100周を大きく超えて回っている。そんな四国のベテランで四国大好き人間だが、高知県は苦手だという。生魚が食べられないという。四国はどの県でも、宿では刺し身が出るが、高知県に入るとはどこに泊まっても、刺し身に加えてカツオのたたきが出るからだ。
僕などカツオのたたきも刺し身の一種だと思うが、高知の人は違う。僕の遍路経験を書くので、納得してもらえると思う。
自転車遍路で宿毛市の39番・延光寺のそばにある遍路宿に泊まった時だった。夕食はわざわざ1人用の皿鉢料理を用意してあった。もりだくさんだったので、メモがパソコンに残っている。
タコ、イトヨリ、カニかまぼこのすし。巻きずし、玉子やゴブでで巻いたすし。卵をたくさん持っているエビ、それにカニ。オレンジ、イチゴ、バナナ、リンゴも盛ってあり、あんパンまで。おはぎもついていた。
それだけでいいじゃないか。そう思うだろうが、そうはいかない。ほかに刺し身の皿がついていて、主役は当然のことながらカツオ。
それで十分以上じゃないかと思うのだが、土佐ではそれだけでは欠けているものがあるのだ。カツオのたたきがちゃんとついていた。カツオに関しては、刺し身とたたきのダブルである。
遍路旅の先達(案内人)で、足摺国際ホテルに泊まった。夕食は皿鉢料理のスタイルを取り入れたものだった。3~4人ずつが1組になって食べる。真ん中に大きな皿が置かれ、その上に小皿が乗っている。小皿の中は1つごとに違う料理で、それぞれ人数分あった。手長エビのから揚げ、チャンバラ貝を殻ごと煮たもの、川魚のフライ、枝豆、エビの塩ゆで、サトイモの煮物、サザエのつぼ焼き、ようかん。
それだけでいいじゃないかと思ったが、そうはいかない。皿鉢風以外に、各人の料理があった。その中にちゃんと、カツオのたたきがあった。たたきは別格なのだ。
別の機会で泊まった時は。カツオのたたきを自分で焼かせてくれた。表面から3ミリ焼くのだといい、皮の方は結構長い時間、1分以上焼いた。ここまでくると、カツオのたたきは、群をぬいた食べ物であり、エンターテインメントの主役でもある。
いの町のかんぽの宿伊野に泊まっと時は、朝食はバイキングで、カツオのたたきがドーンと盛ってあった。高知はたたきなしでは朝は始まらないし、夜は終わらないのだ。
カツオのたたきを買ってきて、食べやすい厚さに切る。大根を薄い輪切りにし、塩をふってしばらくおく。しんなりしたら、水分を絞り、大葉は半分に切る。カツオの切り身を大葉はさみ、その上から大根ではさむ。ハクサイを細く切り、並べたカツオの大根巻きの上にふり、ポン酢などをかけて食べる。
タタキをほんの少しだけアレンジしたズボラ料理。でも、高知ではこれをタタキと認めないに違いない。仮にこの料理を出したら、きっと正当カツオのタタキつけるに違いない。(梶川伸)2022.04.13
更新日時 2022/04/13