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編集長のズボラ料理(565) 豚肉とチンゲンサイの炒め煮

葉はすぐ火が通るので要注意

 青梗菜(チンゲンサイ)はどこかユーモラスな響きがある。そう思うのは、僕だけなのだろうか。
 その昔、家のそばに豚珍館という中華料理屋さんがあった。「とんちんかん」と読むだけで、おかしみを感じてしまうから、トンチンカンな話である。
 チイゲンサイにしても、豚珍館にしても、「○ン」が続く。そのリズムによって弾んだ気持ちになり、顔の筋肉が緩んでしまう。
 例えば青椒肉絲。「チンジャオロースー」と読む。これも「ン」があるが、それだけではにない。「チンジャラ、チンジャラ」というパチンコの音を思い出してしまう。玉が次々出る音につられて、よだれもダラダラ出る。
 棒棒鶏(バンバンジー)はどうか。これも「ン」つきだが、バンジージャンプも頭に浮かぶ。僕は高所恐怖症だから、連想したくはないが、食べる時は清水の舞台から飛び降りる気持ちになる。でも、口に入れてしまえば、バンバンザイである。
 拉麺(ラーメン)は、アーメンを思い浮かべる。清らかな気持ちになり、ズルズルとスープをまき散らしながらすする。この落差がおもしろい。
 回鍋肉(ホイコーロー)は、「ン」付きではないが、ゴキブリホイホイに結びつく。しかし、一口食べると、後はホイ、ホイと軽薄に食べてしまう。
 そして、みんなが好きな八宝菜。通なら「パーポーサイ」と言う。パーポー。パーポーと、救急車みたいではないか。落ち着いて食べていられない、と思うのだが、口にすれば八方美人のごとく笑顔を振りまいてしまう。
 こう考えてくると、日本人は料理を通して、中国語をよく知っている。王将に行って、餃子(ギョウザ)を頼む。すると店員さんは「コーテル・イーガー」とか「コーテル・リャンガー」と応じる。日本の食生活には、中国語がまん延してる。
 振り出しに戻って、チンゲンサイ。何だか、江戸時代の学者の陽明学者の名前のようではないか。
 チンゲンサイは茎の部分と葉の部分に分け、食べやすい大きさに切る。豚肉は切るのが面倒くさいから、切り落としを使う。しょうゆ、砂糖、酢、みりんを混ぜて、味付け用のたれを作っておく。フライパンにサラダ油とゴマ油を入れて熱し、チンゲンサイの茎と豚肉を、コショウをふって炒める。少量の水を加え、葉も加えて炒め煮にし、たれで味をつける。最後は溶いたカタクリ粉で、とろみをつける。
 ところで、コーテルは王将風中国語らしい。焼きギョウザは中国にはないらしい。日本料理なのだろうか。「ウーン?」。おかしくもないが、「ン」で締めてみた。(梶川伸)2021.11.30

更新日時 2021/11/30


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