編集長のズボラ料理(552) レンコンと柿のサラダ
僕は奈良の方に住んでいる。「方」と書いたのは、正確に言うと、住んでいるのは奈良ではないからだ。
住所地は京都府の最南部の木津川市。ただし、僕の家から南に隣接する奈良市までは100メートル。歩いて8分の最寄駅も、歩いて9分の図書館(分館)も、奈良市にあるから、生活圏は奈良と言ってもいい。
とはいえ、どこに住んでいるかを聞かれると、奈良と京都を使い分ける。「ほぼ奈良の京都」など、ややこしいからだ。関東に人には「大阪の方」と言うことがある。「大阪に近い奈良のすぐそばの京都」など、ややこしいからだ。
大学生の読書感想文を見ている時、「出身県でわかる人の性格」という本を、課題図書に出したことがある。ある女子学生の感想文を、おもしろく読んだ。
<八王子出身の私は「出身は」と聞かれて即座に「東京です」と答えるにいささか抵抗がある。「東京です」の後に、「でも都心じゃありません」と弁解したくなる。…東京に対する郷土愛は、あるような、ないような。この優柔不断さが「江戸っ子」になれない「八王子っ子」の気質かもしれない。>
僕も優柔不断で「奈良の方」と言うと、よく「奈良にうまいもんなし、という言うけど、ホンマ?」と聞かれることがある。奈良には奈良漬けと柿の葉ずししかないと思っている人が多いのだ。
実際にはそうでもない。みむろ最中がある。でも、最中はどこにでもあるか。では、柿須賀はどうだ。
奈良は柿の産地である。「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の俳句だってある。
柿須賀は干し柿をベースにしている。ユズの皮の甘露煮を干し柿で巻いてある。ほとんどが干し柿だが、これが上品な甘味でいい。
柿は甘いのだ。高松市に住んでいた時、木守(きまもり)を知った。干し柿と和三盆で作っていて、高松の代表的な和菓子だった。
岡山県の干し柿きんつばを食べたこともある。干し柿をきんつば型に成形したものだった。
柿はそれだけで和菓子になる。奈良は産地なので、胸を張って料理にも使う。
レンコンは皮をむき、薄い輪切りにし、だしと酢で煮る。生の柿を薄く切る。それらを砂糖、酢、白だしを混ぜたものにし、しばらく漬けておく。水分をふき取り、マヨネーズで和える。
奈良には、柿ようかんもあるし、柿もなか、柿チップスもある。奈良にはうまいもんもある。柿以外にも、多分ある。(梶川伸)2021.10.14
更新日時 2021/10/14