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編集長のズボラ料理(533) 枝豆はんぺん団子

つゆも入れて吸い物のようにしていい

 「日本の伝統色」という本があり、時々開いてみる。色の名前と簡単な説明、写真が載っている。色の名前を調べるにはもってこいだし、日本人の色に対する繊細さがわかる本でもある。
 例えば「緑系の伝統色」の章を見る。萌黄(もえぎ)、苗色、草色、若緑、柳色、緑青(ろくしょう)、青丹(あおに)、苔色、抹茶色、若竹色、青竹色、鶸色(ひわいろ)、若草色、裏葉色、青白橡(あおしろつるばみ)、青緑、浅緑、鶸萌黄、若葉色、青磁色、深緑、白緑、松葉色、海松色(みるいろ)、木賊色(とくさいろ)と並んでいる。
 ほんの小さな緑の変化を、日本人は見分け、区別してきた。何と素晴らしい。しかも、自然の中に存在する色がほとんど。植物の葉が緑系統だからかもしれないが、色の多さは日本人の植物好きを物語っている気もする。
 枝豆の色も緑だ。僕は美しい色だと思う。ビールの黄金色と比べるとどうか。これは難しい。主役はビールで、枝豆は脇役だから、軍配をビールに上げてしまうかもしれない。
 でも、よく検討すると、主と脇の位置関係には微妙な点がある。家でビールを飲む時、節約して発泡酒や第3のビールをよく飲む。そうすると、350ミリの缶で120円前後でおさまる。最近は本物のビールの酒税が下がり、200円を切る。
 一方、スーパーで枝豆を買うする。ネットに入った1袋は200円を超す。枝豆の方が高価ではないか。ここで、主・脇の逆転現象が起きる。
 ただし、これも悩ましい点がある。枝豆は1袋でも量は結構あるから、ビール1缶のあてとしては余ってしまう。そこで、枝豆を平らげるために、本物の方のビールを2缶にすると、金額はビールの勝ちとなる。再逆転である。
 ただ、時には茶豆や黒豆の枝豆といったブランドものを食べたくなる。これは値段が高いので、再再逆転が起こりうる。ややこしぎるから、この辺で切り上げる。
 枝豆はゆでて、さやから外す。はんぺんを手でつぶす。それに枝豆と卵の白身を加え、手でよく混ぜ、団子状に丸める。鍋でだしを温め、白だしで味をつけ、細く切ったハクサイとはんぺん団子をゆでる。火が通ったら、器に盛る。
 これは白と緑の色の組み合わせが勝負なので、味付けは色のつかない白だしにした。「日本の伝統色」の「白系」の部分を見ると、胡粉(ごふん)、灰白色、乳白色、練色(絹の糸)、鉛白、卯の花色、砥粉(とのこ)色、白土が載っていた。素晴らしい本だが、僕としては「緑系」の章に、枝豆色がなかったのは残念に思う。でも考えてみれば、枝豆は日本人がビールを飲み始めてからのものかもしれないので、伝統食にはならないのかも。(梶川伸)2021.08.13

更新日時 2021/08/13


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