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編集長のズボラ料理(523) 固焼きそうめん

表面をパリパリにする

 そうめんの1束は、中途半端だと思う。
 夏になると、家でよくそうめんを食べる。京都府と奈良県の府県境に住んでいるので、奈良の名産の三輪そうめんになじみがある。前住所は高松市で、香川県には小豆島そうめんがある。そうめんには縁が深い。
 小豆島の人が江戸時代に伊勢参りに行き、途中で三輪そうめんの技術を持ち帰ったという説がある。だから、僕の場合は縁の深さは普通の人より深い。
 香川といえば讃岐うどん。お土産用の半生うどんを作っている会社に、石丸製麺がある。うちの近くのスーパー「近商ストア」では、石丸製麺製造のそうめん(乾麺)を売っている。それが安くて、なかなかいける。だから、僕の場合、そうめんとの縁は深すぎる。
 冒頭で「1束は中途半端」と書いたのは、量ことだ。1束は1人前なのだろうか。1人前にしては少なくはないか。だから、店で食べることはない。もし単品で頼んで、運ばれてきたそうめんが1束分だけだったらどうしよう、と警戒するからだ。
 もしソバであれば、お代わりをしても、2杯目の時に「ソバツー」と見られるかもしれない。でも、そうめんだと、変り者とみられるだけだ。
 もし讃岐うどんであれば、最初から2玉とか3玉を頼む人はざらにいる。でも、そうめんだと、ただの大食いと見られるだけだ。店も、そうめん大盛りなど想定していない。
 先日、奈良県桜井市の長谷寺に参拝した。庭のある食事処が参道にあり、そこでで昼食をとることにした。庭を通って行くので入りづらい店だが、そうめんと柿の葉ずしのセットメニューが、入口に書いてあったので、安心した。
 店に入ると、主人が「柿の葉ずしが全部出てしまいまして。そうめんだけでは、男性には物足りないと思いますが」と言う。客思いの正直な店だと思った。
 この店はきっと、そうめんは1束に違いない。それでは少ないと分かっているから、柿の葉ずしがついているのだろう。そうめんは単独では売れないのではないか。
 自宅では単独で食べる。だから1人1束はありえない。たいては2束にする。ところが2束も微妙なのだ、時に、「やや多いな」と思う時もある。お腹がすいていると、2束はペロリ。そう思って3束にすると、余ってしまう。
 今回はそうめんが余った時の料理。丼に水を張り、そうめんを入れて冷蔵庫で冷やしておく。使う時はザルに入れ、よく水を切り、さらにキッチンペーパーで水分を吸い取る。ほぐしたサケ、刻みネギ、白だしを加えてよく混ぜる。フライパンにサラダ油を入れて熱し、そこにそうめんを入れ、お好み焼き型に形を整える。しばらくそのまま焼き、焦げ目がついてきたらひっくり返す。また焦げ目がつくまで焼く。お好み焼きの要領で焼く。
 子どものころ、「アーメン、ソーメン、冷やソーメン」と言いながら食べていたのを思い出す。この呪文は焼いたそうめんにも通用するのだろうか。(梶川伸)2021.07,16

更新日時 2021/07/16


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