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編集長のズボラ料理(508) ハルサメと貝柱のスープ煮

青みを少し加えればよかった

 ハルサメを買う時、いつも思い迷うことがある。中国ハルサメにするか、日本ハルサメにするか。
 ハルサメのことを調べると、10世紀ごろ中国で生まれた。原料は緑豆だった。それが12世紀ごろに日本に伝わり、やがてイモを原料に作るようになった。「まねし」から始まった国産ものだが、歴史も重ねてきた。
 ハルサメに比べれば、日本ウイスキーの歴史ははるかに短い。ところが……。
 3年前、スイスで日本料理のシェフをしている友人を訪ねた。彼から頼まれたことがあった。「飛行機に乗る前、日本のウイスキーを免税店で買ってきてほしい」。日本のウイスキーが人気だというのだ。
 成田空港の免税店に行って驚いた。何と1万円もする高いウスキーはどれも売り切れていた。そこで、2番目ランクのものを3本買って行った。その事情を彼に話すと、「やっぱり。空港以外で買ってもらえがよかった」と言う。
 その昔は、外国旅行の土産といえばウイスキーだった。それもジョニーウオーカー黒ラベルに決まっていた。大学ではサントリーレッドかハイニッカを飲んだ世代だから、高嶺の花のジョニ黒をもらうと、それだけで酔いが回った。同時にジョニ黒がスコッチの代表だと信じ切っていた。
 社会人になって、飲む日本ウイスキーは1ランク上がり、サントリーオールド(だるま)になった。一方で輸入ウイスキーの関税がどんどん下がり、値段が安くなって、ありがたみがなくなった。同時に、ジョニ黒以外にもいろいろあることを知り、少なくともジョニ黒は全く飲まなくなり、だるまで満足した。
 それが今、日本ウイスキーブームになるとは。僕が知っている大手メーカー以外のものは、兵庫県の明石、福島県の963黒ラベル、長野県の信州だけ。もっと飲んでいれば、スイスに行った時に、本場・日本のウイスキーについて知ったかぶりができたのに。
 その彼が日本に幸帰りした際、今度は日本のワインを土産に買って帰った。日本ワインも人気らしい。そういえば、カレーにしてもラーメンにしても、本家を上回る人気を誇る。日本のまねしは、力強いのだ。
 ウイスキーについて書いているうちに酔いが回ったのか、回り道をしてしまったが、ここでハルサメに戻る。湯でもどし、鶏がらスープの素を入れて煮る。貝柱、切ったマッシュルームも加え、さらに煮て、白だしで味をつける。
 中華味にしてもよかったのだが、それは中国の完全まねしになりそうで、味だけは和風にした。中国と愛国心の産物と言える。(梶川伸)2021.05.26

更新日時 2021/05/26


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