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編集長のズボラ料理(426) イワシのハンバーグ

ショウガ、ネギを多めにして、イワシの生ぐささを押さえた方が食べやすい

 魚の骨はおもしろい。なかったら、どんなに便利かと思う。でも、タイのあら煮には、骨がないと成り立たない。骨から出るだしが大事だからだ。
 随分と昔だが、魚屋さんで夜は居酒屋さんに変わる店によく行った。もちろん、夜の部。女将は魚屋がメーンで、卸売り市場に権利を持っていたから、魚は生きがいい。ただ、料理の方は、それほど得意ではなかった。
 その店でも。タイのあら煮をしばしば食べた。身をせせって骨だけにした後、熱い湯をかけてもらう。このスープがしめの一品だった。熱湯代がかかるわけではないのに、なかなかいけるので、骨さまさまである。「骨まで愛せて」である。
 骨はやっかいものでもある。淡路島の沖の沼島で、ハモすきを食べたことがある。店の主人にハモの骨切りを見せてもらった。身と骨の間に骨があり、抜くわけにもいかないので、身と一緒に細かく切る。主人は「1寸(3.3センチ)を24に切る」と語り、巧みな包丁さばきを見せてくれた。
 そこまでしないと、ハモは食べられない。そんな技術は、一般の家庭にはないだろうし、僕など1切れでもする能力はないない。
 骨切りどころか、骨を外すの能力もない。骨身を惜しまず練習すれば少しは身につくのかもしれないが、そんなつもりはさらさらない。
 僕のような人のために、最近は骨抜きの魚をスーパーで売っている。これでますます、骨抜きに骨を折る必要がなくなり、自分の力でなんとかしようという思いが、完全に骨抜きにされてしまった。
 そうなると、おかしなもので、「少しは僕のために、やることを残しておいてよ」と言いたくなる。料理の実感のためには、何か手を加えたくないのだ。でも手抜きをしたい。身勝手なものである。
 イワシは手開き。頭を切り落としたら手で開き、中骨も取り除く。それが料理らしいのだが、つい安易な方に流れ、今回は頭を取ってあって、骨も抜いてあるイワシを使う。
 ただ少しだけ料理に実感がほしいので、残っているの小骨があれば、その部分を包丁で切り取る。さらに、皮を手ではぐ。簡単だから、これくらい自分でせねば。
 イワシの身をみじん切りにする。さらに料理らしくしたかったら、両手に包丁を持って、2本でたたくように切る。トントントントンとリズムに乗って切ると、これは盛り上がるのだが、このパフォーマンスは誰かそばにいる時にする。1人でやっても、おもしろくない。
 おろしショウガ、ネギと大葉のみじん切り、卵、少量のしょうゆ、かたくり粉を加えてよく練り、表面に小麦粉をふってから、油をひいたフライパンで焼く。このズボラ料理としては、骨を取りイワシを見つけた時にした方がいい。(梶川伸)20.08.05

更新日時 2020/08/05


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