このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(415) 長イモのワサビ味浅漬け

漬けすぎると歯ごたえがなくなるので要注意

 漬け物なんて、どこでもあるし、家でも作る。でも、京都の漬け物となると、一目置いてしまう。何でだろう。
 広島に親類が多いから、冬になると広島菜を送ってくれる。おばが元気だったころは、一辺が30センチもあるプラスチックの箱が2つも届いたから。3~4カ月は漬け物付の日々だった。京漬け物ではそんなことはありえない。1つの種類の漬け物はたいてい小袋1つ分。少し物足りない、と思わせるのが、京漬け物の神髄といえる。
 僕は奈良市まで200メートルの京都府内に住んでいる。だから、漬け物といえば、奈良漬けがなじみ深い。甘めの味付けをしている山崎屋の「刻み奈良漬け」をよく買うが、それには理由がある。
 本店は奈良市の中心部にある。しかし、買うのは自宅から歩いて2分のイオン。何と本店で買うより安い。そのうえ、「20日、30日5%オフ」なら、さらに安くなる。
 1つ、ひっかることがある。イオンのビルの中に京都と奈良の府県境が走っている。山崎屋の奈良漬けはサービスカウンターの横に置いてあり、そこは京都側なのだ。厳密言えば、京都で奈良漬けを買うことになる。しかし、値何より値段が優先する。
 漬け物はどこにでもある。滋賀県に行け日野菜を買うし、長野県に行きば野沢菜のお焼きも食べる。盛岡市・神子田の朝市では、ニンジンの漬け物のシソ巻きを買った。言い方は悪いが、たかが漬け物だから、気楽なものである。
 でも、京都ではそうはいかない。すぐきの漬け物なら、なり田でなければならないし、しば漬けなら辻を選ぶことになる。決して気楽ではない。
 京都駅のビルで、土井しば漬本舗の漬け物ランチを食べることがある。メーンのおかずと、あとは用意された漬け物を自由に食べる。そんなセルフサービスの食べ放題の店だが、日本料理と分類される上品さがある。
 新大阪駅に西利の店でランチを食べたことがある。正式名は「京漬物味わい処」で、食べているのはご婦人ばかり。京都の漬け物は居住まいを正して食べる。
 京都の漬け物店「もり」の商品パンフレットを見ていて、長イモの漬け物・ワサビ味を作ることにした。長イモを短冊に切る。浅漬けの素に多めのワサビを入れてよくかき混ぜる。それに長イモを漬け、1日置く。
 もちろん本物とは違う。第一、作り方を知らない。京漬け物とはほど遠いから、居住まいを正して食べる必要はない。ガバガバ食べてよい。(梶川伸)2020.06.15

更新日時 2020/06/20


関連リンク