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編集長のズボラ料理(416) 鶏肉のマスタード・ハチミツ焼き

少し焦げ目がついた方がおいしく感じる

 「あわおどり」といっても、踊るわけではない。「殿様バッタといっても、殿様ではありません」のコマーシャルをもじってみた。40年あまり前、毎日新聞徳島支局で勤務していたから、阿波踊りにはなじみがあり、出だしに使っただけで、全く意味はない。
 徳島は「四国の盲腸」と揶揄されほど、目立たない県だった。日銀の支店すらなく、高松支店の出張所に甘んじていた。
 そんな徳島だが、2つだけ全国に通用するものがあった。1つは選挙の激しさ。僕が勤務しているころは、田中角栄と地元の激しい「三角戦争」があり、徳島の議員・首長がさまざまな選挙でぶつかり、「三角代理戦争」と呼ばれた。
 徳島県知事選挙では三木系列の現職が、田中-地元の後藤田正晴系列の新人に敗れた。選挙事務所をのぞくと、住宅地図が置いてあり、1軒ごとにどちらの候補に投票するかを分析していた。小さな村や町ならまだしも、県レベルで住宅地図。それほど選挙好きだった。
 接戦だったから、まことしやかに言われたエピソードがある。両候補の選挙事務所の間に橋があった。県庁の工事をする業者は開票日に、橋の上にたむろし、当選確実が出たとたん、勝者の事務所になだれ込んだとか。
 もう1つは阿波踊り。徳島支局の備品の中にも、阿波踊りの浴衣など、衣装があった。その昔はマスコミ連(確かそういう名前だったと思う)があって、各新聞社の記者が集まって踊りまくったらしい。仕事しているのだか、何をしているのだか。
 僕が赴任した時には、その風習は残っていなかった。ただ、阿波踊りが近づいてくると、支局のメンバーで小さな居酒屋さんに行くのが恒例だった。店の女将は阿波踊りがうまく、踊りを教えてもらう名目で、仕事はそこそこに切り上げて飲みに行った。
 一応手ほどきは受けるのだが、僕の場合は音楽音痴だから、全く上達しない。それでも、阿波踊りの当日になると、素人でも参加できる「にわか連」に入って、踊りまくった。仕事しているのだか、何をしているのだか。
 最近は「あわおどり」でも阿波尾鶏との縁が深い。徳島のブランド鶏のことだ。関西でも見かけるようになった。冬になると、鍋用の「阿波尾鶏のスープ」を時々買う。これはお薦め。だから、夏は阿波踊り、冬は阿波尾鶏となる。
 今回はブランド鶏は使わなかった。鶏肉のぶつ切りをしばらく塩水に漬けておき、取り出してペーパータオルで水分をふく。ボールに卵の白身を入れてよくかき混ぜる。粒マスタード、ハチミツ、白だしを加えて混ぜ、その中に鶏肉をしばらく漬けたあと、オーブンで焼く。
 徳島市に阿波踊り会館があり、毎日踊りを見ることができる。最後は観客も踊る。遍路の先達として、参加者を案内し、僕も踊ったことがあるが、下手さは相変わらずだった。どうも、阿波尾鶏に専念した方がよさそうだ。(梶川伸)2020.06.25

更新日時 2020/06/25


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