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編集長のズボラ料理(410) 細切れ豚とタマネギの南蛮炒め

カタクリ粉で少しとろみが出る

 僕は京都府の最南部に区域に住んでいる。奈良県の府県境までは200メートルほど。
 最寄り駅は奈良側にあり、歩いて10分足らずで行ける。現役時代はその駅から、大阪市・西梅田の毎日新聞まで通っていた。乗り継ぎが順調なら、所要時間は1時間15分でだった。しかしルートをたどれば、京都府→奈良県→大阪府となる。大遠征である。
 僕はこの2府1県を使い分けている。記者時代は大阪での時間が長いから、「大阪大好き」と言ってはばからなかった。奈良の友人たちとは、「奈良大好きクラブ」というブログを開設している。
 関東の人間には、「京都はええよ」と臆面もなく言う。「大阪には山口組と阪神タイガースと吉本しかない」と思って関東人が多く、大阪嫌いな人が多いからだいるからだ。そこで、「1000年の都、京都どすえ」と言い、「江戸時代って、ちょっと昔のことどすな」と、さりげない優越感を示す。
 しかし、京都と言うと、やっかいなことがある。関東人も京都の名所をよく知っているから、「清水寺の近く?」だとか、「嵐山方面?」などと、固有名詞を挙げて追加質問してくる。その場合は、「もうちょっと南の方どす」とお茶を濁すことにしている。ほんとは宇治茶の産地よりも、さらに南なので、お茶を大いに濁している。
 というわけで、奈良に対する郷土愛もいい加減なものだ。それでも、奈良県民が大好きな精肉店「福寿館」の牛肉だけは同調する。
 そこの肉は高いから、きれいな形のステーキ肉は買わない。切れ端で我慢する。さいころステーキ用として売っているから、客に出すときも響きがいい。
 薄切り肉もきれいな形のものは買わない。切り落としを買う。この店の切り落としは、薄切り肉の完形に近い大きさだから、お客さんに出しても、バレることはない。
 スーパーで薄切りの豚肉を買う。安いから切り落としにする。しかし「切り落とし」よりも、「小間切れ」の方がよく通る。だから、お客さんには出しにくい。何せ「豚こま」である。響きが悪いではないか。
 豚こまを2枚重ねて、水溶きカタクリ粉をのり代わりにして張り合わせる。かたくり粉をまぶして、油で揚げる。タマネギをたくさんくし切りする。しょうゆ、砂糖、酒、みりん、酢を混ぜて、たれを作る。タマネギをサラダ油とゴマ油で炒め、たれを入れて味をつけ、さらに豚肉を加えてさらに炒める。
 これなら豚こまとは見えにくいが、もしお客さんにがバレたら、「この厚さがいいの」と言って、その話題おから離れる。(梶川伸)2020.05.20


更新日時 2020/05/20


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