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編集長のズボラ料理(411) ブリのクレイジーソソルト焼き

僕は脂の多い腹の部分の方が好みだが

 JRで新大阪駅に行く機会があると、よく駅弁を買う。改札口の中に駅弁を売るコーナーがあるからだ。
 全国各地のものがあるので、選ぶのが楽しみだが、でも迷ってしまう。後に並んでいる人のことを考え、最後はエイヤーで選ぶ。これがいけない。
 食べる段になって、地元の淡路屋のものと知る。淡路屋は何種類も用意しているので、当たる確率が高い。
 淡路屋の弁当が嫌なわけではない。評価もしている。さらに、淡路屋には恩がある。その昔、ひもを引っ張ると熱を発し、温かい弁当になる商品を淡路屋が開発した。その技術で特許を取った時、社長に取材させてもらった。取材の後は、神戸市・三宮で一杯飲ませてもらったので、淡路屋派である。でも、各地の弁当を味わってみたいではないか。
 楽しいから友人の家を訪ねる時も、駅弁を買って行くことがある。ところが、喜こばれた記憶がない。「駅弁は列車で食べるもので、家で食べるものではない」と正論を言うから、おもしろくない。
 駅弁の中では、富山の「ますのすし」が1番好きだった。適度に脂がのったマスの押しずし。曲げわっぱのような容器で、平たく切った竹とゴムでふたを押さえている。おかずもないシンプルな駅弁だが、これが癖になる。
 竹も貴重だ。僕はロードレーサーというタイプの自転車に乗っていた。時々タイヤを交換するが、リムにきつくくっついていて、外すのに苦労する。その時、ますのすしの竹の出番となる。竹の一方の端をナイフで薄く削り、そこをタイヤとリムの間に差し込んで外す。そんなヘラは、自転車屋には売っていないのだ。自転車のためのも、ますのすしを食べねばならなかった。
 ところが、同じ富山で「ぶりのすし」に出会い、トップの座の交代が起きた。「ます」が「ぶり」に代わっただけだが、冬の脂ののり具合は、マスの比ではない。それに、竹ヘラは大量にできたので、新たに供給する必要もなくなったことも、トップ交代の大きな理由だ。
 ブリの切り身に、クレイジーソルトを十分にふり、オリーブオイルで両面を焼く。焼き終わったら、食べやすい大きさに切って、皿に並べる。ブリてり(ブリの照り焼き)が定番だが、そればかりでは飽きてくる。
 ところで、僕にとって駅弁のトップの座はまた変わった。新大阪駅のホームの売店で買ったサバのサンドイッチに。(梶川伸)2020.05.26

更新日時 2020/05/26


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