編集長のズボラ料理(400) ウドの皮のかき揚げ
千葉県に住む弟の家を訪ね、1泊した。久し振りだったので、弟の娘とその子ども2人も集まった。
弟の奥さんは料理がうまい。その血を引いているのか、娘もうまい。だから食べ物にはうるさいので、土産を持って行くにも気を使う。思いついたのが551の豚まんと、神戸市・南京町の新生公司の焼き豚だった。これでどうだ、完璧ではないか。
1つだけ、不安があった。豚まんは臭う。では、新幹線の車両の中での充満を、どう乗り切るか。新聞記者の現役時代、後輩が東京に出張するたびに、王将のギョウザを向こうの職場に持って行った。どうして運んだか、聞いておけばよかった。
仕方がないから、自力で考えた。ノンスメルを詰めていくか。でもそれでは、食べる時に無臭ではおいしくない。リュックサックの奥底に収めて、上は着替えで厳重に包むか。それでは、翌日、豚まんの臭いを着て歩くことになる。そこで割れ物を荷造りするときに使うブツブツのついたビニールシートで包装して持っていった。
弟の家に着いて、そんな話から始めた。食べ物好きの一家だから、話し出し止まらない。列車の中で何が臭いか、というテーマである。奥さんはタコ焼きだという。「列車の中では食べられないよね」と言い、娘は「新幹線で食べた時は周りが気になって」と補足する。結局は食べたのか。それは食べた方が悪い。前後2列ずつの座席の客にとっては、えらい迷惑である。
そこで僕は、「カニを列車で食べるのはやめた方がいい」対抗した。兵庫県・城崎温泉で安売りの紅ズワイガニを買い、友人とそれをあてにして、ビールを飲みながら大阪に帰ったことがある。床に新聞紙を敷き、カニをガツガツ、チューチューと食べ、殻をドンドン新聞紙の上に積んでいった。これも食べた方が悪いわけで、前後3列ずつの座席の客にとっては、えらい迷惑だったに違いない。すいません。
臭いの話の次は、春の香りだった。弟の娘が「ウドの時期がやってくる」と話してしまったのだ、奥さんは「ウドは皮もいい」と言い、娘は「キンピラが1番」と続けた。すると奥さんが「穂の部分の天ぷらも」と展開する。
でも、ここは僕の僕の出番である。高校時代の友人が大きなウドを8本も送ってきたこたがある。8本を食べきる苦労は、誰にも負けない。いろいろと調理したのだ。天ぷら(編集長のズボラ料理82)、皮のキンピラはもちろん、カラシ和え、ウドのバター炒め(編集長のズボラ料理174)、梅酢漬け……。それらをまくしたてて、ウド合戦で勝利を収めた。
そこで今回は、ウドの皮かき揚げ。皮を細く切り、小麦粉をまぶす。小麦粉に少々のコーンスターチを加え、水を加えてシャブシャブ気味の衣を作る。皮の細切りを入れてかき混ぜ、はしでつまんで熱くした油に入れサッと揚げる。
弟の家を出る時、土産に持たせてくれたのは、千葉県産落花生半立種の真空パックだった。臭いの心配はなかった。(梶川伸)2020.03.17
更新日時 2020/03/17