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編集長のズボラ料理(399) フキのサンショウ煮

シャキシャキ感とひすい色が命

  思い込みはおもしろい。信じ込んでいるので、それを崩されると、ちょっとしたことでも大いに感動する。
 歌山県紀の川市の「華岡青洲の里」にあるバイキング方式のレストラン「華」で、昼食を取ったことがある。焼きおにぎりの玉子スープが目につき、まず食べてみた。玉子スープに焼きおにぎりが入っているシンプルなものだが、初めてだった。
 焼きおにぎりはそれとして食べ、それにスープがつくのであれば、感動も何もない。それなのに、その一体化は創造しないから思い込みが崩れ、1番に選んでしまった。やがて自分でも作ってみた(編集長のズボラ料理⑧)。
 大昔、家族で大阪市梅田のバイキングレストラン「オリンピア」に行った。幼かった息子はまず、好物のカレーライスをモリモリ食べ、あとはチョコレートシャワーのマショマロを少し口して、満腹になってしまった。それなら、カレー屋に行けばよかったのだ。
 華では、親子のDNAが一致していることを再確認した。最初にご飯ものとスープを選んだので、お腹が膨れてしまったのだ。反省しているうち、思い込みのおもしろさに気がついた。玉子スープの中に焼きおにぎりがあると思うから意外なわけで、焼きおにぎりに玉子スープをかけたと思えば、あり得る食べ物だ、と。
 子どものころは、パイナップルは果物で、おかずになるとは思ってもみなかった。大人になって中華料理店で酢豚を食べると、パイナップルが入っていた。びっくり仰天し、思わず「グリコ、チヨコレート、パイナツプル」と叫んでしまった。
 遊び仲間と沖縄に行き、那覇市の牧志市場で食べ物を物色した。1人がパイナップルを買うという。僕は切って食べるものと思い込んでいるので、「ナイフがないからアカンで」と止めた。ところがそのパイナップルは、皮の亀の甲のようなものを1つずつ引っ張ると、実がついてくるので、刃物がいらなかった。感激してまた、「グリコ、チヨコレート、パイナツプル」と言いながら、ケンケンをした。
 友人宅に遊び仲間が集まった。買って来たできあいの食べ物を皿に移し、小宴会が始まろうとした瞬間だった。1人が買っていたフキをを見せ、「一品作る」と言い出した。フキは煮るもと思い込んでいるから、僕は「時間がかかる」と止めた。しかし友人はチャッチャと炒めてテーブルに乗せた。シャキシャキとして、いい酒のあてになり、僕は思い込みを反省しながら、バクバク食べた。
 今回は思い込みの方。フキは皮をはぎ、食べやすい長さに切る。十分にだしを取り、みりん、塩少々、白だしで味をつけ、サンショウの実も加えて煮る。シャキシャキ感を残して火を止め、しばらく煮含める。
 僕は春になるとサンショウの実を買い、冷凍庫に入れておいて1年間使う。友人は佃煮にしたものを冷凍していると思い込んでいて、「生で?」といぶかるが、、思い込みはアカン。
 なぜオーソドックスな煮物にしたのか。実は炒めてみたのだが、炒めすぎて色が黒っぽくなり、写真ばえしなかったので、方向転換した。炒めるのは簡単と思い込んでいたのが失敗だった。(梶川伸)2020.0.309
 

更新日時 2020/03/09


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