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編集長のズボラ料理(398) 豚とリンゴのショウガ焼き

味が薄いと思ったら、炒め焼きする時に、漬け汁をかけるといい

 この冬はリンゴが豊作だった。青森県や長野県のことではない。むしろ信州や東北は大雨で、大変な被害を受けた。豊作はわが家のことである。
 その予兆はあった。2019年5月に長野県辰野町のリンゴ農家を訪ねた。毎年リンゴを送ってもらう農家に、「1度リンゴの花が見たい」と頼んだのだ。夜行バスで行き、夜行バスで帰る0泊3日の弾丸旅行だったが、天気に恵まれ、青空と雪が残るアルプスを背景に、白い花を撮ることがことができた。
 それだけでも大満足だが、農家のご夫婦の人柄が素敵で、大いに甘えてしまった。迎えに来た奥さんの車に乗せてもらうと、「料亭を予約しているから行きましょう」という。初対面だから、「エッ!」である。
 車で案内されたのは、古い民家だった。古民家料亭かと思ったが、家のたたずまいは特別ではない。そこは夫婦の自宅だった。奥さんが昼ご飯を用意したので、料亭としゃれたのだが、何といういうしゃれた言葉。
 料亭のメーン料理はタケノコご飯だった。それに焼いたマスの南蛮漬け、山菜の天ぷら、それに野菜類。ご飯が気に入り、茶碗1杯食べ終わると、奥さんが「お代わりは」と聞く。当然のように「はい」。すると奥さんは台所に行き、また茶碗にいっぱい入れて、運んできた。またバクバク食べてしまった後、ひょっとしたら夫婦の分まで食べてしまったかもしれないと反省した。
 料亭料理の後はデザート。「冬に収穫したリンゴが少し残ってあるので、食べますか」と聞く。思いず「はい」。食べ終わったあと、ひょっとした大事に残していたものだったかもしれないと反省した。
 第2の予兆は、9月に遊び仲間で東北旅行をしたことだった。青森にリンゴ畑で、早くも赤くなったリンゴを見つけ、レンタカーを止めた。広いリンゴ畑で人目はなかったが、摘み取るわけにはいかないので写真だけ撮り、その代わり十和田湖でリンゴソフトを食べてごまかした。
 年末が近づき、辰野町から恒例のシンゴが1箱届いた。大玉なので、1日1つ食べれば満足する。半分に減ったころ、実家が青森のご近所さんが「たくさん送ってきたので」と、リンゴ5つを持ってきた。その翌日、友人が長野の林檎5つを届けてくれた。大豊作で、食べても食べてもへらない。
 そこで料理にも使った。しょうゆに砂糖を混ぜ、大量のショウガを加えて、それに豚肉の切り落としをしばらく漬けておく。フライパンに油をひき、豚肉を炒め焼きし、後からリンゴのスライスも入れて、さらに炒める。
 豚のショウガ焼きは一般的な料理だが、たまには目先を変えてみたくなる。その時は、リンゴを加えるのがお薦め。特に豊作の時は。(梶川伸)2020.02.28

更新日時 2020/02/28


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