このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(344) フキ・チリメンご飯

フキのシャキシャキ食感は大事

 食べ物には「つきもの」という組み合わせがある。
 和歌山ラーメン食べるとする。店では「なれずし」食べるのが,
しきたりとなっている。サバの押しずしで、たいていは棚に並んでいて、ラーメンを注文すると同時に取りに行く。決まり事であって、客に残されている自由は、ラーメンが運ばれてくるまでに食べるか、ラーメンと一緒にたべるかの二択だけである。
 入社して初任地が和歌山市だった。和歌山ラーメンを知り、井手商店に行く。狭いくて暗い店だった。「ラーメンにはゆで卵やろ」と、反発の日々は続いた。やがて、なれずしではなく、おにぎりを頼む客をを見かけると、「初心者が」と冷たい視線を浴びせ、「和歌山では、ざ行とだ行が逆転するのもしらないんや」と、和歌山ラーメン通を誇るようになる。
 香川県に住んだことがある。讃岐うどんを食べ歩いて、おでんの役割を知る。野球で言えば、バッテリーのようなもので、おでんなくして讃岐うどんなし。
 讃岐うどんにはおろしシュガを乗せる。おでんはみそだれをつける。そして、店内を見回す。うどんに七味トウガラシをふっている客を見つけると、「初心者やな」と判断して相手にしない。おでんにカラシをつけていれば、「素人や」と同情する。おでんも食べずに、おにぎりを食べる客がいれば、怒りを抑えるのに必死になる。
 かなくま餅福田で食べる時だけは例外と言っていい。あん餅うどんを注文する。それにおでんを取る。力うどんの餅があんこの入った餅であるという変化はあるものの、ここまではさぬきうどんの王道を歩む。
 問題は次のステップだ。さぬきうどんにご飯は邪道ではあるが、ここでは干しエビのおこわは欠かせない。というこで、3点セットとなるが、量が多すぎて食べきれないジレンマに陥る。その場合はに、そっとパックをもらって、干しエビのおこわを持ち帰る。讃岐うどんを正しく食べるには、そのくらいの覚悟がいる。
 ひるがえって大阪。うどんには、かやくご飯と決まっている。例えば大阪駅前第1ビル地下2階の手打ちうどん店「たかはた」は、香川県出身者が始めたが、みんな「かやくセット」と略して言うくらい当たり前のことになっている。讃岐うどん+ご飯の邪道の組み合わせに怒りを爆発させて、「火薬」と言っているわけではない。
 かやくご飯は炊き込みご飯のことで、家でもよく作る。ただ、炊き込みたくないものもある。はるばる遠回りしたが、やっと本題にたどり着いた。
 家族が「テレビでフキの炊き込みご飯」を見たと言う。「見た」は「作れ」と同義語である。しかし、「フキはどうも」と、あまり乗り気がしない。しかし、2度も言われては、その圧力に抗しきれない。
 フキを煮る。だしをしっかり取る、フキの緑色を残す、シャキシャキの食感を大事にする、といったことを注意し、煮含ませる。炊飯器のふたを開け、適当に切ったフキを入れ、煮汁をかけて混ぜ、しばらく置く。茶碗に盛る時に、チリメンも混ぜる。
 炊き込みではなく、混ぜご飯にした妥協の産物ができた。フキを別皿のおかずとして食べた時と、どう違うのかはわからない。(梶川伸)2019.04.28

更新日時 2019/04/28


関連リンク