このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(339) エビと卵の白身の中華風炒め

白とピンクの色が勝負どころ

 友人に鍋好きの男がいた。正確に言えば、鍋の終盤好きの男だった。最近は会う機会がなくなったが。
 冬に仲間で鍋を食べながら、酒を飲む。フグなら、それに越したことはない。ただし高い店には、絶対に行かない。
 フグ好きの弁護士に誘われて、食べに行ったことがある。警戒はしていた。弁護士だから、少なくとも僕よりは金を持っているだろうし、しかもお薦めの店だというからには、危険性が高かった。
 割り勘で1人2万円と聞いて、テトロドキシンの毒に当たったようなショックを受けた。その後、フグの店は値段を調べて行くのを、肝に銘じているし、フグの肝は食べないことにしている。あたり前だ。
 その点、別の弁護士に教えてもらった店は安かった。「ふぐどん」という店で、15年前ほど前は、てっさやから揚げ、てっちりのコースで2000円前後だったような記憶がある。よく行ったが、1つ課題があり、東京の友人を誘うと、店の名前を「さすが、大阪だね」と笑った。
 やがて、大阪市の裁判所の近くの店はなくなり、行くことはなくなったし、東京弁で笑われることもなくなった。豊中の店は残っているようだが、3000円ほどに値段が上がっているらしい。
 鍋の終盤好きの男の話に戻る。もっと正確に言えば、鍋の締め好きということになる。
鍋のスタートから具をさらえるまで、この男の出番はない。
 鍋の締めは雑炊となる。ご飯と卵が運ばれてくると、男は動き出す。ご飯には目もくれないが、卵は店員に任せないで、自分で溶く。はしでかき混ぜ続け、1分過ぎてもやめない。黄身つきではあるが、メレンゲ状を目指す。
 ほかにも卵と器があれば、一緒に行った仲間にもそれを強要するからたまらない。腱鞘炎(けんしゅえん)を起こす寸前に溶くのをやめ、鍋に回し入れる。その方がホワホワするというのだが、明らかにそうだ、と実感したことはない。では、何のためかき混ぜ続けるのか、と何度も思った。
 今回は白身だけで、黄身は使わない。白身だけをよくかき混ぜ、腱鞘炎を起こさない程度にメレンゲ状を目指す。海老は背わたを取る。フライパンに油をひき、エビを炒める。味付けはチューブに入った手軽な中華ペーストが便利だ。色のつかないものがいい。中華ペーストがなければ、鶏ガラスープと白だし、砂糖、塩で。最後に白身を加えてかき混ぜながら、サッと炒める。これはホワホワ感が勝負。(梶川伸)2019.03.25

更新日時 2019/03/25


関連リンク