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編集長のズボラ料理(334) ザーサイ大根餅

大根餅の具は好みで

 30年ほど前、神戸に住んでいた。神戸といえば中華なので、南京町や、元町・三宮の中華料理店にはしばしば行った。よく食べたのは、ぎょうざ苑のみそだれギョウザ、一貫楼や老祥記の豚まん、梅春園のちまきだった。
 民生の焼きそばも食べた。何や、ジャンクなものばかりと思うかもしれないが、それには先輩の奥さんの教えがある。
 奥さんは神戸で店を開いていたこともあり、食べ物の店をよく知っていた。「食パンを買うならセントラル。南京町で食べなら焼きそば」。その言葉にはずっと従っている。
 最初に南京町の中華料理店に行った時は、家族連れだった。うなると、ちょっとええかっこをしたくなる。いくつか注文して、その中にトウガンのスープも加えた。運ばれてきて、「ホホーッ」と思わず見とれてしまった。トウガンは中身をくり抜いてスープの入れ物にし、皮には包丁で繊細な彫刻が施されていた。
 感心することしきりだったが、同時に警戒感が植え付けられてしまった。むやみに注文すると、高いものにつくかもしれない、と。そして、先輩の奥さんの言葉を思い出す。「焼きそばならどの店でも大丈夫」
 「大丈夫」は心強い。民生以外でも食べたが、多くはそばが少し焦がしててある。その上に具がのっていて、大丈夫だった。
 「大丈夫」とう言葉は、当時よりも存在感を増している。スーパーのレジでは、客ごとに大丈夫の交換がある。「駐車券、大丈夫ですか?」「大丈夫です」。少なくとも2回。時にはさらに2回。「買い物袋、大丈夫ですか」「大丈夫です」
 南京町では、自宅への土産も物色した。堂記の焼き豚、広記商行のザーサイとギョウザの皮。これらも大丈夫だった。特にザーサイは、塊のものは安いので、よく買った。
 今は南京町から遠く離れている。そこで、成城石井でカットされている味付きのザーサイを買ってきた。ザーサイは細かく切る。大根をおろし、水分はのぞく。小麦粉とカタクリ粉、さらにザーサイ加え、白だしを少したらす。よくかき混ぜ、円盤状にする。フライパンに油をひき、大根餅を焼く。
 大根餅も南京町で買い食いできる代表格の1つだが、神戸にいる時に食べた記憶がない。だから、今回の作り方はズボラらしくいい加減なもので、大丈夫かどうか。(梶川伸)2019.02.20

更新日時 2019/02/20


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