編集長のズボラ料理(330) セリの豚肉巻きの蒸しもの
セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。春の七草を、こう覚えた。
しかし、柳宗民の「雑草ノウト」などを読むと混乱する。ナズナはペンペン草というくらいは知っている。ハコベラはハコベを連想するから、その古名ではないかと推測もできる。
スズナはカブ。そう言われて、よく見れば、そんな格好をしている。その延長で、スズシロがダイコンであることも。しかし……。
ゴギョウは「オギョウ」が正しいと、牧野富太郎が言ったらしい。それだけならいいのだが、今の植物だとハハコグサで、それも正式にはホウコグサだとか。こうなると、わけが分からなくなる。
では、ホトケノザ。今、ホトケノザといえば、小さなピンクな花をつける春の野草だ。しかし、七草のホトケノザは今の花でいえばタビラコ。タンポポの様な小さな黄色い花をつけるから、ピンクノホオトケノザと似ても似つかない。ホトケノザとカキドウシとヒメオドリコソウを見分けるでもややこしいのに、混乱に輪をかえるのはやめてほしい。
七草の中で、セリだけは、セリである。だから古代から、七草の不動のトップバッターの地位を占めているに違いない。
今の名前で七草を書いてみる。セリ、ペンペン草、ホウコグサ、ハコベ、タビラコ、カブ、ダイコン。どうも様にならないし、七草がゆも食欲がわかない。
七草の代表といってもいいセリだが、不満もある。持ち味は香りだろう。しかし、七草がゆにすると、それほど強い香りを感じない。ただ、個性が強すぎるのにも抵抗があり、安心する面もある。セリはそんな人間の気持ちに甘えていないか。
セリの香りを楽しむのは、セリをたくさん使えばいいのだ。豚肉の薄切りを広げ、その上のセリの茎の部分と葉の部分を混ぜ、少し斜めにしてたっぷりと置く。豚肉で巻いていき、最後は溶いたカタクリ粉をのり代わりにして、豚肉の巻きがほどけないようにする。皿に盛り、少し酒を振りかけて蒸す。
セリが多ければ、豚肉の味にセリ勝つ。もの足りない場合は、しょうゆ、酒、みりん、おろしショウガを混ぜ、かけて食べる。(梶川伸)2019.02.04
更新日時 2019/02/04