編集長のズボラ料理(331) ジャガイモとタマネギのアンチョビ炒め
1年に1度、昔の仲間が会う機会がある。もう30年以上になる。
いろいろな食べ物を持ち寄り、僕は必ず551の蓬莱の豚まんを10個持っていく。四国から来る人もいるので、大阪の味を食べてもらうのだ。
大阪の味は、551の豚まんに尽きる。白に赤文字の紙袋で持って行く。すると必ず誰かが「豚まんが来た」と言う。声を出すのは、四国の友ではなく、大阪の仲間で、豚まんを食べる儀式をちゃんと心得ている。
「来た」のは豚まんではなく、「僕」なのだが、それは我慢して、声に合わせて紙袋から赤い箱を出す。箱の上に黄色のカラシが乗っているので、それを脇に置く。それからおもむろに箱を開けると、白い豚まんが姿を表わす。この時点で初めて「豚まんが来た」となるのだが、それは我慢する。
551の場合、この色の変化こそ本質ではないか。シュウマイや肉団子は色の変化に乏しく、土産に持って行くには邪道といえる。
味について書けば、皮の部分の甘さと、タマネギの甘さに尽きる。そう考えると、タマネギは優れものだ。
遍路仲間で、淡路島の休暇村南淡路に泊まった時のことだことだ。夕食のバイキングの席で、係の女性が「甘いので」と言って、しきりとタマネギのサラダを勧めた。フルーツタマネギという名前だという。
甘い言葉に誘われて、食べてみた。確かに甘い。ドレッシングも掛けずに、バクバク食べた。
翌朝、土産物を探しに売店をのぞいた。すると、フルーツタマネギが山積みにされ、特別販売キャンペーン中だった。前夜の甘い言葉は、ここにつながっていた。
甘いわなだと思ったが、3つも買ってしまった。それは甘い考えだった。1つが大きくて、3つはとてつもなく重いことを、後で思い知る。
ジャガイモを細く切る。タマネギはスライスする。フライパンにオリーブオイルをひき、ジャガイモとタマネギを炒める。味付けはコショウと最後にアンチョビソース。
アンチョビは塩辛いので1度に加えず、チョビッとずつ垂らした方がいいと思う。(梶川伸)2019.02.08
更新日時 2019/02/08