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編集長のズボラ料理(314) ゲソのカーリックオイル痛め

タコのガーリックオイル炒めは「編集長のズボラ料理」202回

 イカの足はあわれだ。「ゲソ」などと呼ばれる。音の響きからして良くないので、聞いただけでゲソッとしてしまう。
 ゲソは、下足(でそく)に由来するらしい。下足は人が脱いだ履き物を指したが、人間の足そのものも指すようになり、すし屋ではイカの足にも使うようになったと書いてあるのを読んだ。イカにも、ありそうな説だ。
 ゲソに比べると、胴体は優遇されている。剣先イカの活け作りが食べられるとなると、それだけでその店のブランドが上がってしまう。もちろん、胴体の方だ。原田知世のような透明感がある。だから、主役と添え物たるゲソの差は歴然としている。第一、胴体の方は格子状に包丁を入れて美しさに一層磨きをかけるが、ゲソには入れることすらできない。ゲソはしょせん添え物にすぎない。
 一方、タコはどうか。圧倒的に足が偉そうにしている。すし屋さんでも、おでん屋さんでも。頭は酢の物の中に、恥ずかしそうに入っているだけ。
 第一、胴体というイメージすらない。頭からすぐ足が出ているその姿は、火星では認められて、地球ではおかしいとなる。どうなっているのだろう。
 こう考えてくると、タコの足とゲソでは、大変な格差があることが分かる。イカの足の友は、タコの頭で、コンプレックスの塊と言っていい。
 しかし、庶民はゲソを忘れない。その安さは、庶民の味方ではないか。だから、ゲソの応援団となる。「足同士ならタコもイカも同等に評価されるべき」と。
 そこで、思いついたのが、ガーリックオイル炒めだった。タコの足なら人気がある。コンプレックスを解消酢るンはするには、その料理をそっくりまねしてしまえばいい。同じ物なら、最後は足の数で勝てる。
 ゲソの吸盤の固い部分は指と爪で外しておく。足は2本ずつに切る。フライパンにオリーブオイルを入れ、ニンニクのみじん切りを加えて、ゆっくりと熱し、ニンニクオイルを作る。ニンニクは真っ黒けに焼ける前に取り出す。イカを入れ、塩、コショウを振って炒める。最後に少ししょうゆたらし、ニンニクをフライパンに戻し、もうひと炒めする。
 写真の材料費は200円あまり。それでもニンニクオイルで炒めれば、タコの足とに格差は縮まる。つまりニンニクオイルは料理の世界の福沢諭吉の体現者なのだと思う。「天はイカの上にタコをつくらず、タコの下にイカをつくらず」(梶川伸)2018.09.22

更新日時 2018/09/22


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