編集長のズボラ料理(313) ジャガイモのロシュティ風
料理に、おいしい・まずい、はない。人それぞれの好みだから、共通しておいしいものなどない。これが持論で、今回は特にそう感じた。
遊び仲間5人がスイスをテーマにして、友人宅に集合した。この夏、遍路仲間とスイスに行った。仲間のおい(僕にとっても遍路仲間)がスイスにいて、招いてくれたのだ。いろいろな店に連れて行ってくれ、自らも作ってくれた。今回は向こうで覚えてきたスイス料理のお披露目という名目の、単なる飲み会だった。、
僕が腕を振るったのは、マッシュルームのチーズ焼き(ズボラ料理311回)と、竹輪の天ぷらのキュウリの漬け物ヨーグルトソース(ズボラ料理310回の変形)。もう1人は、東スイスの郷土料理、ジャガイモのロシュティだった。
でき上がるころ、残り3人が来た。この中にグルメ夫婦がいる。特に奥さんは料理の名人だから、料理素人にはいろいろと教えてくれ、有り難い存在と思っている。しかし、なかなか手強い。
部屋に入り、一直線に台所に進んで来た。竹輪の天ぷらを見て、「これなら食べられる」。開口一番がこれか! 衣に青ノリが入っているのを夫が好きだというから、わざわざ家から青ノリを持ってきたのに。
そして言う。「どこがスイス料理なの」。天ぷらにつけて食べるタルタルソースを見てほしい。スイスの人が友人の家に連れて行ってくれた時に、ヨーグルトにピクルスを混ぜたタルタルソースがキッシュとともに出てきたのだ。確かにスイス料理と胸を張ることはできないが、スイスで食べたらスイス料理でいいではないか。
今度は、タルタルをなめて、クレームをつける。そこで説明する。元同僚からキュウリを大量にもらい、浅漬けの素で漬け物にしたものがたくさんあるから、それを持ってきてピクルスの代わりにした、と。
次の言葉は「ダメ。ピクルスとキュウリの漬け物は違う!」。そこまで言わなくてもいいではないか。人の好みはそれぞれ。第一、僕のように料理の人間がいるからこそ、うない人が目立つだけのこと。そんな分際で偉そうにしてはいけないのだ。
ただ、僕も味見をしてちょっとおかしい思った。そこで少しマヨネーズを加えてみた。次に白だしも入れてみた。クレージーソルトも追加した。このタルタルには、そんな歴史があるのに、「それだからダメ。サラダのソースならいいけど」と言い放って、天ぷらだけを食べていた。
マッシュルームのチーズ焼きは、スイス料理の代表格の1つ「ラクレット」と作ってくれた時に、サブメニューに出てきたものものだった。ただ、ラクレット用のチーズがないから、普通のとろけるチーズを代用していた。そうすると、こうくる。「ラクレット用のチーズ、持ってきてたのに」。もう、遅いわい。
さらに腹が立つことがある。僕の下手な料理を想定してこの朝、自分で作ったおでんを宅配便で送り付けていた。大量に。どう思う、この仕打ち。
もう1人が作ったロシュティはまずまずだったようなので、特に書かない。僕が思いついた作り方を教えても、「自分のやり方で作る」とと跳ね返すし。仕方がないから、自宅で作ってみた。
ジャガイモを5ミリ角程度の細い拍子切りにして、2分ほどレンジにかける。ベーコンを千切りにする。フライパンを熱くしてバターを溶かし、ジャガイモとベーコンをクレイジーソルトを振りながら炒める。軽く焦げがつくようになると、半量を円盤状にし、その上にとろけるチーズを適当に乗せる。さらにジャガイモの半量を乗せ、フライ返しで押さえつける。上にバターを乗せ、溶けたらアルミホイルを被せて、上からさらに押さえつけ、ジャガイモ同士が少しつぶれてくっつき、3分の1ほどに焦げがついてくるとできあがり。
それにしても、グルメ夫婦のラクレット用チーズとおでんは残っているはずだ。そう考えてまた、友だちの家に行き、しこたま食べてやった。腹いせである。。(梶川伸)2018.09.13
更新日時 2018/09/13