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編集長のズボラ料理(286) カキのチャーハン

カキは炒めすぎると縮んでしまうから気をつけた方がいい

 慣れと勘違いは恐ろしい。
 僕はしょうゆが好きだから、いろいろなしょうゆを使っている。青とうがらししょうゆ、鮭(さけ)しょうゆ、オリーブオイルしょうゆ、しじみしょうゆ、焼き鮎(あゆ)・海洋深層水しょうゆ、ハチミツ醤油(しょうゆ)、佐賀海苔(のり)とろとろしょうゆ、しょうがしょうゆ、鯛しょうゆ、雲丹(うに)醤油、明石の魚笑、そら豆醤油……。数え出したら切りがない。
 旅先で見つけては買う。滋賀県長浜市の北国街道・木之本塾を訪ねたことがある。ブラブラ歩いていると、江戸時代から続くしょうゆ屋を見つけ、土産に買った。再び歩き始めると、またしょうゆ屋。さらにもう1軒。結局3本も買ってしまった。もちろん、小さな瓶ばかりだが、それでも重い。よく考えて買え、しょうゆうことだと、自分に言い聞かせ、以後は最大2本までと、厳しい規律を自らに課している。
 そんなことで、いつからか変わった味のしょうゆを探すようになった。味のついたしょうゆが当たり前になり、それに慣れてしまった。
 本来のしょうゆはどんなものか。ふと考えて、それからは余分な味を加えていない生(き)じょうゆを探すようにした。基本的には大豆と塩だけのしょうゆで、シンプルなのに、探すと意外とない。少なくとも近くのスーパーには置いてない。だから旅先で見つけると買う。問題は生しょうゆが何種類もある時で、厳しい規律を守るかどうか決断が求められる。それほど数は少ない。。
 次はオイスターソース。中華料理店でナスのオイスターソース炒めを食べて、一挙に好きになった。それ以来、スーパーで買っている。四角い小瓶に入っていて、黒くドロッとしている。ナスから始め、肉や野菜を炒めてきた。その黒い色が食欲をそそる。そう信じ込んでいた。
 すっかり慣れてしまっていたが、友人から兵庫県漁連の「漁連が作ったオイスターソース」をもらい、愕然(がくぜん)とした。黒くない。ヘルメスのとんかつソースのように、黄土色に近い色をしている。いかにもまずそうな色だ。
 使ってみると、カキの味がする。そうだったのか。個人的常識が崩れ落ちたのは、中華料理店から40年ほどたった2017年のことだった。
 フライパンに軽く油をひき、カキをオイスターソースで軽く炒め、取り出す。炒めた時に出たスープも容器に移しておく。再びフライパンに油をひき、みじん切りの玉ネギ、小口切りのマイタケ、ご飯を炒め、だしの素を少し加えて炒める。青ネギのみじん切りを加え、残したスープの半量を入れ、しょうゆも香りづけにたらしてさらに炒める。ご飯をフライパンの一方に寄せ、残りの部分に半量のスープを注ぎ、カキを炒めて温め直す。
 皿に盛るときは、ご飯の上にカキを乗せると見栄えがいい。こうなると、焼き飯とチャーハンでは、いつも焼き飯という言い方をするが、今回は慣れを脱して、カキのチャーハンと呼んでみた。(梶川伸)2018.01.04

更新日時 2018/01/04


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