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編集長のズボラ料理(268) 玉子豆腐の天ぷら

玉子豆腐は柔らかいので、大きいと揚げにくい

 親類が広島に多いから、時々広島に行く。行くと必ずお好み村か、駅ビルのお好み焼き横丁に行く。当然ながら、広島焼きを食べるためだ。
 薄い生地の間に、千切りのキャベツと焼きそばなどをはさむタイプのお好み焼きで、大阪ではあまりない。広島スタイルだから、大阪人間は「広島焼き」と呼ぶ。
 しかし、広島では決して、広島焼きとは言わない。あくまでお好み焼きで通す。それどころか、お好み焼きの本場は広島だと自負している。
 四半世紀前だから、状況が変わっているかもしれないが、広島県の広報課員が面白いデータを発表したことがある。都道県の人口当たりのお好み焼き屋数を調べたものだった。広島県が日本1のお好み焼きどころだと証明したかったのだ。
狙い通り、人口当たりのお好み屋の数は47都道府県で1番だった。「お好みは大阪」とたかをくくっていたる大阪府としては、顔が青くなるほど驚いた。それどころか、兵庫県にも負けて3位。青を通りこして、真っ青になった。
 お好みがだめなら、タコ焼きがある。兵庫県明石市には、だしで食べるタコ焼きがある。タコ焼き本家と信じて疑わない大阪人は、優越感に満ちてそれを、明石焼きと呼ぶ。
ところが明石の人は、決して明石焼きとは言わない。タコ焼きとも言わない。玉子焼きと言う。大阪のタコ焼きとは全く別の食べ物と思っている。
 明石の友人に、玉子焼きの店を教えてもらい、友人と食べに行ったことがある。「ふなまち」という小さな店で、テーブルは2つ。10人で満員になった。玉子焼きは板の乗せて運ばれてくる。その瞬間、玉子焼きの実力を知った。20個で500円。
 10年ほど前、大阪市・伝法で、おばあちゃんが15個100円のタコ焼きを売っていた。大阪の代表選手ではあったが、それは老後の楽しみで売っているようなものだった。一方、ふなまちは商売としてやっている。完敗だ。
 玉子焼きには勝てない。そう思っていたが、ついに勝ち筋を見つけた。それは将棋の藤井聡太4段を負かすようなものである。
 スーパーで売っている玉子豆腐を使う。1個50円くらいと安いから、失敗しても大したことはない。実際には、冷蔵庫に眠っていたものを活用した。
 玉子豆腐はペーパータオルなどで包んで、少し水分を抜く。4つに切って、小麦粉をまぶす。小麦粉にコーンスターチを少し混ぜて水を加え、天ぷらの衣をつくる。玉子豆腐に衣をつけ、油で揚げる。
 玉子豆腐についているつゆを、小さな器に入れ、玉子豆腐の天ぷらをつけて食べた。その瞬間、口の中で勝利を呼び込む味が広がった。玉子焼きそのものなのだ。もう、明石まで行かなくてもいい。バンザーイ。タコ入っていない分、もっと玉子焼きらしい。(梶川伸)2017.07.21

更新日時 2017/07/21


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