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編集長のズボラ料理(230) カブのオリーブオイル・アンチョビ焼き

アンチョビソースは楽だから使うが、もちろんアンチョビそのものでもよい

 来た! そろそろ来ることだと思っていたら、来た!
 家の玄関のピンポーンが鳴った時から、予感がしていた。かれこれ半月になるから、「多分」と思ったらその通りだった。
 愛媛県宇和島市からの宅配便のことだ。毎日新聞の元同僚が住んでいて、定年後に趣味で農作業を始め、自らを「ファーマー」とうそぶいている。わずか、6、7年の経験なのに。
 子どもはとっくに独立して、夫婦2人での生活している。野菜を作っても、そうそう2人で食べられるものではない。残りはどうするか。考えた結果が、僕をターゲットにして送りつけることだったに違いない。その恐怖は、ピンポーンが呼び起こす。
 ありがたいのである。ただ、量が多い。だから、懸命に食べる。食べ終わると間もなく、次が来る。
 ありがたいのである。ただ、同じものが多い。そうなると、寝ても覚めてもメニューを考えることになる。同じ料理ばかりでは、飽きてしまうからだ。
今回は大根、カブ、ニンジン。今回も、は大根とカブ。このうち、大根は紫色の大根も混じっていたから、ちょっと目先が変わって、何とかなった。
問題はカブだ。大きなものを5つも送ってきた。前回もそうだったではないか。
 前回の直後、かの偽ファーマーが用事で大阪に得てきた。お互いに夕方から用事があったので、それまでの2時間ほど飲むことになった。中途半端な時間帯だから、24時間居酒屋での一杯になった。
 そこで僕の課題を強く投げかけた。「カブをたくさんもらって、ありがたいのではあるが、何を作ればいいのだ?」。野菜のお礼に、支払いは僕がすることにしていたので、強気である。
 すると偽ファーマーは、こともなげに言った。「酢と砂糖に漬けて、べったら漬けのようにしたらいい。コンブも入れて。簡単だから」
 「そんなもん、1つ目のカブでやってるわい。コンブも入れたし」。これは心の声で、実際の言葉は「やってみたわ」と穏やかだった。
 すると偽ファーマーは、ためらいなく言った。「それならスープ。ベーコンも入れて」
 「そんなもん、2つ目のカブでやったわい。米久(静岡の食品メーカー)のベーコンも入れて」
 そのあたりから、酔っ払って何を話したか記憶がない。覚えているのは、別れ際に偽ファーマーが言った言葉だった。「また、送るわ」
 正夢となり、ピンポーンが鳴った。さて何を作るか。薄く切って、塩をふって食べるのが好きだが、前もしたし、大根やウリでもするので、新鮮味に欠ける。そこで、困った時のアンチョビ頼みとなった。
 カブは皮をむいて、輪切りにする。大きかったので。縦半分に切ったうえで、やや薄めに切った。軽く塩、コショウをふる。フライパンにオリーブオイルをひき、カブの両面をゆっくり焼く。火が通りにくいを思えば、しばらくふたをして、蒸し焼きにする。最後にアンチョビソースをかけて、さらに軽く焼く。
 カブはまだ残っている。一部は漬け物にしよう。娘に電話をして遊びに来るように誘い、また押しつけるか。(梶川伸)2016.12.04

更新日時 2016/12/04


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