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編集長のズボラ料理(225) 櫛切りキャベツのオリーブオイル・シラス蒸し 

蒸す時に、僕は少し白だしを加える

 立ち飲み屋が好きな年上の友人がいた。彼に連れられて行かれた店は多い。
 大阪市の梅田のガレージで夕方から店開きをし、マグロが人気の店も行った。野田の卸売市場の近くの酒屋の立ち飲みにも。京橋の墓場の横にある路上立ち飲みに行った時は、パラパラと雨が降ってきて、大急ぎで飲んだ。
 千日前の店は2階建てで、なぜかわざわざ2階に上って飲むのが好きだった。何でだろう。急な階段なので、酔っ払って転がり落ちないか、いつも心配した。相手も同じ思いだったとは思うが。
 ミナミの御堂筋に沿った日航ホテルで、10分単位の料金設定になった立ち飲みイベントが開かれたことがあった。そんな情報には滅法強くて、さっそく誘いがあった。立食パーティー形式だったので、どうも落ち着かず、早々に退散して、千日前の2階に上った
 彼は1人でも、よく立ち飲み屋に行った。行きつけは、梅田の地下街の串カツ屋だった。僕はご一緒させてもらったことはない。彼はその店での飲み方を、「ダークダックス飲み」と言った。よく混んでいるので、客がみんなカウンターに対して半身になって飲むからだと解説した。
 串カツ屋には、たいていキャベツが置いてある。それをソースの入った容器にサッとつけ、串カツを食べる合間に、バリバリと食べる。キャベツはサービスだからで、もちろん彼もそうしていた。しょせんキャベツは添え物だからだろう。
 串カツ屋のキャベツについて、彼の体験がおもしろい。京都の立ち飲み屋に行って、串カツを頼んだ。カウンターの皿にキャベツがあり、手を伸ばして食べた。すると、隣の客に怒られた。「オレのキャベツを食べるな」
 大阪ではサービスだが、京都ではそうではなかった。そのキャベツは隣の客が注文したものだった。そりゃ、怒るわ。
 ここまで彼のことを、過去形で書いてきた。実は彼は亡くなってしまった。しばらくして、息子さんが来て言った。「親父が飲んでいた店で飲んでみたい。連れて行ってほしい」と。2人で献杯を重ねた。
 彼の追悼の意味も込めて、キャベツを使う。小さめのキャベツを丸のまま、櫛切りにっする。串カツ好きだったからといって、「串切り」「串カット」ではない。縦に4等分にする。タジン鍋かフライパンにオリーブオイルをひき、ニンニクのスライスと一緒に熱し、ニンニクオイルにして、焦げたニンニクは取り出す。ニンニクオイルの上にキャベツを置き、タカノツメ、塩、コショウをふり、蒸し焼きにする。しばらくしてシラス、焦げたニンニクを乗せて、さらに蒸し焼きにする。
 これなら、キャベツも添え物ではなくなる。だとすると、亡くなった彼も、間違って食べることはないだろう。献杯!(梶川伸)2016.10.08

更新日時 2016/10/08


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