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編集長のズボラ料理(219) アスパラのタルタル

タルタルソースにスダチの皮の千切りを混ぜると、爽やか感が出る

 アスパラと言う。本当はアスパラガスなのに、あまりそうは言わない。
 「ガス」の2文字を切って縮めているのだが、かえってその方がいいような気がする。「ガス」という響きが、どうも食べ物には合わない。2文字抜いたからといって、薬と間違える人はいないだろうし。
 おやじはアスパラ好きだった。食べるのはホワイトアスパラ。だから大人になるまで、アスパラは白いものだと思っていた。とは言っても、子どものころに食べたことはなかった。大人の雰囲気があって、寄せ付けなかったし、おいしそうだとも思わなかった。
 大人になってホワイトアスパラを食べたかというと、数えるほどしかない。覚えているのは、クリーム煮くらいのものだ。少なくとも、家では作ったことはない。
 では、グリーンアスパラはどうか。こちらは家でも時々使う。ただ、僕には頭の痛い課題がある。普通のアスパラをそのままゆでると、皮の繊維質が口に残る。だから根に近い方の皮をピーラーでそぐ。この際、どこまで深くそげばいいのか、それが問題なのだ。
 切り取りすぎると、最近よく見かける細いアスパラと変わらなくなってしまう。そこで長年考えてたどり着いた結論は、細いアスパラを使うことだった。我ながら安易な結論だと思う。
 でも、きっと太い方がおいしいに違いない。遍路の途中、高松市の居酒屋「遊」に寄ったことがあった。高松に住んでいたころから世話になっている店だ。だから、訪ねると、女将は勝手に料理を出してくる。ある時、最初が瀬戸内の魚の刺し身ではなく、香川産のアスパラ「さぬきのめざめ」だった。超太いもので、皮はそいであった。調理はそれだけ。生のままで、好みで塩をつけて食べる。
 そいだ部分は白い。おやじの好物を思い出した。食べるとジューシーで、シャキシャキ感もある。細いアスパラは足元にも及ばない。四国はええとこや、と再確認した。初夏には遍路道で、白い小さな釣り鐘状のアスパラの花も楽しめるし。
 面倒くさいから、細いアスパラを使う。さっと塩ゆでして、皿にいかだ状に並べる。ゆで卵の白身の部分を小さく切り、コショウも加えてマヨネーズであえて、タルタルソースを作る、それをアスパラいかだの上に乗せる。
 ズボラ料理だが、遊のさぬきのめざめの生よりは手間をかけている。遊で2番目に出てきたのは、さぬきのめざめを軽くあぶったものだった。味はその方が上だったかおしれないが、衝撃度は生の方だった。(梶川伸)2016.09.21

さぬきのめざめ

更新日時 2016/09/21


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