編集長のズボラ料理(181) 豚の新ショウガ焼き
春は何でも新がつく。新入生、新人、新学年。新がつけば、何でも初々しい。
食べ物もそうで、新ジャガ、新タマネギ、新キャベツ。何でも爽やかな感じがして、食べないと損をしたような気がする。「新」には魔力があるだ。注意しないと、その魔術にだまされてしまう。
そこで、新ショウガ。これも春らしい。いつもは茶色でガサガサした感じの土の塊のようなショウガを見ている。そこに、白い肌の新ショウガが登場する。これは衝撃的に春である。しかも、先に赤い紅をさしている。
これは、だましではなく、本当においしいと見える。だから、その姿を見ると、買わざるを得ない。ただ、家に帰って、ふと気づく。どうして食べようか。
甘酢に漬ける。これはオーソドックスだ。でき上がりは美しいままで、口にすればすがすがしい。ただ、バクバク食べるものではない。食べるのは2~3切れ、多くても5切れだろう。おいしくてたまらない、ということではない。それなのに、作ってしまうのは、新の魔術のせいに違いない。
甘酢以外には何があるか。それがほとんどないから困る。本当は、僕が知らないだけだが。
そこで、茶色い方の古ショウガの亜流を考える。それなら、古ショウガを使った方がいいじゃないか、ということになるが、余っているものは使わなくてはいけないのだ。
ショウガといえば、ほぼイコールの関係で豚のショウガ焼きである。サラリーマンからこれを取ると、昼はサバの塩焼きかみそ煮定食、鶏のから揚げ定食、コロッケ定食しか残らない。そのくらい人生で大きな位置を占めている。
しょうゆ、みりん、酒、だしの素少々を混ぜ、大量の千切り新ショウガを入れる。それに豚肉を漬けこむ。フライパンで豚肉を焼くが、漬け込んだたれを千切り新ショウガと一緒にかけて焼く。
新ショウガは味が柔らかいから、たくさん入れても大丈夫。量で春らしさ演出する。これも魔術に引っかかっているのだろうか。(梶川伸)2016.04.08
更新日時 2016/04/08