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編集長のズボラ料理(155) 糸コン・ミンチ炒め

糸コン・ミンチ炒め

 コンニャクが好きだと言う人がいる。ほんまかいな、と思う。
 「好き」ならいいのだが、「おいしい」と強く言い放つ人がいる。信じられない。
 コンニャクなんて、味などないではないか。もし、おいしいとしたら、コンニャク以外の味のせいである。
 奈良県桜井市の談山神社に行くと、必ずコンニャクの田楽を食べる人がいる。バス遍路のお礼参りで高野山に行く際には、山の中腹のかじか荘でコンニャクのおでんを食べるのが当然だと思っている人がいた(今は新しい道路ができて、かじか荘に寄ることはなくなったが)。そんな人の気がしれない。どちらも、みそをつけるからおいしいだけのことだ。
 「おでんの具で何が好きか」と聞かれ、気軽の「コンニャク」などと言わないでほしい。おでんの具は奥深いテーマで、コンニャクなどが入り込む余地はない。答によって、その人間の根っこの部分までわかるからだ。もし、「コロ」と答えれば、関西に住む人で、しかも子どものころにクジラをよく食べ、その影響からいまだに逃れられない60代、70代の人に違いない。
 同じクジラでも、「サエズリ」などと言う人がいれば、これはやっかいなことになる。大阪市・福島にある庶民的ながら人気のおでん屋「花くじら」でさえ、500円では食べられなかったはずだ。だから、経済的に余裕があると見ていい。。おでん屋さんでサエズリを食べていない時は、フレンチを食べているに違いない。
 コンニャクは控え目でなくてはならない。今夜食うものがない。そんな時のための控え選手みたいなものだ。親父はコンニャクに対して、「今夜食う」と、面白くもないだじゃれをよく言っていた。そんな程度のものだ。
 糸コンニャクも同じこと。「今夜、何作ろうか」と悩んだ時に、思い出せばいい。安いし、手っ取り早いから、その時にやっと出番がやってくる。
 糸コンニャクはさっとゆでて、適当な長さに切っておく。合いびきミンチとネギのみじん切りも用意する。フライパンにサラダオイルをひき、ゴマ油も香りづけにたらす。コンニャク、ミンチ、ネギを入れ、だしの素を振って炒める。味付けはまず砂糖を入れてよく混ぜながら炒め、続いてみりんとしょうゆで煮詰まるまで炒める。でき上ると、その時だけは、糸コンに感謝する。細かい味付けをしなくてもいいし、量もかせげるし。
 ちなみに、談山神社や高野山への途中でコンニャクを食べていたのは、僕だった。うまかった。(梶川伸)2015.12.09

淡山神社 高野山

更新日時 2015/12/09


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